2024農業技術10大ニュース・1位に両正条田植機/田植機・育苗関連機器特集

農林水産省農林水産技術会議事務局が昨年12月20日に発表した「2024年農業技術10大ニュース」の1位は、農研機構構農業機械研究部門が開発した「両正条植えで縦横の機械除草が可能」となる、両正条田植機が選ばれた。同機の概要をみる。
◇
農研機構は、水稲苗を縦横2方向とも揃えて植える両正条植えが可能な植付位置制御機構を開発した。両正条植えをすることで縦横2方向の機械除草が可能となり、これまで除草率が低かった株間でも除草効率が向上する。植付位置制御機構を搭載した田植機の活用により、除草の手間が壁となっていた水稲作での有機栽培の取り組み面積拡大に貢献することが期待される。
SDGsや環境を重視する国内外の動きが加速していくと見込まれる中、我が国の食料・農林水産業においてもこれらに的確に対応し、持続可能な食料システムを構築することが急務となっている。持続可能な農業を目指す「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに耕地面積に占める有機農業の取り組み面積を25%(100万ヘクタール)に拡大する目標が設定された。一方、現状の有機農業の取り組み面積は2021(令和3)年度は0・6%(2万6600ヘクタール)であったことから、目標達成のためには栽培面積の大きい水稲作での取り組みが不可欠。
水稲の有機栽培において手間がかかる作業として「除草」があげられ、規模拡大を阻む1つの要因となっている。農研機構はこれまでに、水稲の除草作業の効率化を目的とした高能率水田用除草機を開発(農機メーカーから市販)し、この機械を活用すれば条間の除草は高能率で行うことが可能。しかし、株間にレーキ(熊手)などを作用させると苗を損傷させる恐れがあるため、条間と比べて除草率が上がらず、残った雑草を手取り除草しなければならない場合がある。機械除草により手間を大幅に減らすためには、株間も条間と同様に高能率で除草するための工夫が必要となる。
そこで、水稲苗を田植機作業方向(縦方向)だけではなく、その直交方向(横方向)の位置も列状になるように揃えて碁盤の目状に苗を植える両正条植えができる植付位置制御機構を開発し、これを市販の乗用型田植機に組み込んだプロトタイプ機を製作した。これにより、水田用除草機を縦横2方向に走らせる直交除草が可能となり、機械除草の効果向上につながることから、これまで困難であった大区画水田での有機栽培の実践を可能とするなど取り組み面積の拡大に貢献することが期待される。
研究の内容は、農研機構がこれまでに開発した田植機の電動植付部を活用し、両正条植えができる植付位置制御機構を開発した。
通常の田植機は同一方向に往復を繰り返しながら田植えを行うため、縦方向には苗の列の幅(条間)が等間隔に揃うが、その横方向には株の位置が列状に揃わなかった。 開発した植付位置制御機構を組み込んだ田植機は、田植機に備えた高精度なGNSS(RTK―GNSS)を用いて、横方向に仮想の基準線を設定して、それに合わせるように植付爪を回転させることにより、横方向にも苗が列状となるように揃えられるようになり、縦方向と横方向が碁盤の目状に揃った両正条植えができるようになる。
電動植付部を用いて両正条植えをした圃場で水田用除草機による除草効果の確認試験を行ったところ、従来の縦方向のみの除草(慣行除草)と比べて、縦横2方向の除草(直交除草)を行うことで株間の除草率が向上することを確認した。
さらに、将来的には、先述の電動植付部の採用が理想ではあるものの、現時点では市販化されていないことから、研究成果を早期に社会実装するため、既に実用化済みである無段変速機を搭載した機械式の植付部を装備する田植機をベースに開発を進めることとし、当該機に今般開発した植付位置制御機構を組み込むこととした。
農機メーカーから圃場内での車輪の滑りによる株間の変動を抑えることを目的として、植付部にHSTを搭載した田植機(クボタNW8S、みのる産業RXG―800、走行部は共通仕様)が市販化されたことから、これらに植付位置制御機構を組み込んだ。具体的には、田植機に備えたRTK―GNSSから取得した自機位置情報を基に、植付爪の回転を横方向の仮想基準線に合うようにHSTを制御する2つのECU(両正条制御ECUと株間制御ECU)を開発し、これらを搭載したプロトタイプ機を製作した。
現地実証にプロトタイプ機を供試した結果、秋田県大潟村の大規模水田圃場(1・25ヘクタール)などにおいても、高精度な両正条植えが実現できることを確認した。
プロトタイプ機はマット苗用田植機(クボタNW8S)をベース機として製作したが、同じ走行部を利用するポット苗用田植機(みのる産業RXG800)にも開発した植付位置制御機構を搭載することが可能。









