井関農機・山下智志氏/欧州農機視察団レポート

この度、第77次農経しんぽう欧州農機事情視察団に参加させていただき、貴重な機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。5泊7日の行程で、展示会「EIMA2024」(イタリア・ボローニャ)、作業機メーカーのMASCHIO GASPARDO社(イタリア・カンポダルセゴ)、農機販売店のLE GOFF&GILLE社(フランス・ムソー ヌーヴィル)、そして現地農家の山下農園(フランス・シャペ)と、計4カ所を訪問し、多くの刺激を受けた視察となりました。
私は、日本国内市場向けのトラクタ開発に携わっており、今回の視察は日本と欧州における農業及び農業機械の現状と将来を比較する非常に興味深い体験となりました。
特にEIMA2024は、視察のハイライトともいえる存在でした。世界150カ国から約35万人が来場し、過去最高の来場者人数を記録したという展示会は、広大な会場と賑やかな雰囲気に圧倒されました。各メーカーのブースでは製品の展示だけでなく、グッズ販売や多彩な飲食コーナー、更にはDJが音楽を流す中でトラクタの走行デモを行うなど、参加者を楽しませる演出が随所に見られ、農業や農業機械への関心を広げる努力が印象的でした。来場者には子ども連れの家族も多く、日本の展示会とは異なる、農業を身近に感じさせる文化が根付いているように感じました。
会場を巡る中で、特に興味深かったのは、無人化・ロボット化技術の展示が少なかった点です。日本国内では高齢化の進行や労働力不足を背景に、ロボット農機への注目が高まっていますが、欧州ではこの分野への取り組みが異なる方向性を持っているように思えました。日本の農業従事者の平均年齢が60~70歳と高いのに対して、イタリアやフランスでは50~60歳と若いことから、労働力不足への切迫感が異なり、無人化・ロボット化技術の導入に対する優先度が低いのかもしれないと感じました。一方で、GNSSアンテナを搭載した農業機械が多く見られたことから、ガイダンス技術や自動操舵の活用は日本以上に進んでおり、市場に広く普及していると感じました。大規模農業が主流の欧州では、ユーザーの負担を軽減するガイダンス・自動操舵の技術が効率化の鍵となっていることと思われます。また、TIM(Tractor Implement Management)技術が広く普及し、システム全体の自動化が進展している点には強い印象を受けました。日本でもこれらの技術を普及させ、農業の形をより効率的なものに変えていきたいと思います。
続いて訪問したMASCHIO GASPARDO社では、自動化された生産ラインがもたらす高い生産性と安定した品質を目の当たりにして、効率化と品質向上の両立を追求する姿勢に共感を覚えました。LE GOFF&GILLE社では、プロ農家向けと個人農家向けのニーズを細かく分析した販売戦略が印象的でした。日本と欧州どちらにおいても同じような課題に悩んでいるとの声もあり、各地域の市場に適したアプローチの重要性を再認識しました。そして山下農園では、小規模経営ならではのブランド化戦略や農作物の付加価値を高める取り組みについて学ぶことができました。これらの体験を通じて、製品開発において生産しやすい設計を行うこと、市場ニーズを捉えた柔軟な開発を行うことが求められることを再確認しました。
今回の視察研修は、日本国内では得られない新しい知見を数多く得る貴重な経験となりました。また、参加者の皆様との意見交換を通じ、多角的な視点や新たなアイデアを得ることができた点も、大きな財産となりました。最後になりましたが、視察を企画していただいた農経新報社様、全行程でサポートをいただいた阪急交通社様には、紙面をお借りして心よりお礼申し上げます。
視察を終え、欧州の先進的な技術や考え方から得た学びを、日々の設計業務に反映していきたいと考えています。今後も、国内外の市場動向に敏感に対応しながら、次世代の農業機械を提案し、農業の未来を切り拓いていきたいと思います。
(トラクタ技術部兼先端技術部技師)









