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令和7年1月6日発行 第3534号 掲載

新春インタビュー:EIMAの目的と展望/FederUnacoma会長 マリアテレサ・マスキオ氏

 昨年11月6~10の5日間、イタリアのボローニャ・フィエレで、世界最大級の農業機械および園芸機械の国際展示会「EIMA International 2024」が開催された。同展はFederUnacoma(イタリア農業機械工業会)傘下会社が主催するもので、1969年開始以来、今回で46回目。日本とは一味違う規模の大きさやグローバル化の進展、若い来場者の熱気、欧州農機のトレンドなどが感じられたEIMA2024は、34万6800人と過去最高の来場者を記録し、盛況裡に幕を閉じた。今回は主催者であるFederUnacoma会長のマリアテレサ・マスキオ氏にインタビューし、EIMA2024の概要、世界農機情勢、日本の農機に対する評価などを伺った。(取材はEIMA開催前日。一部データは記者会見より)
 ――EIMA2024の開催おめでとうございます。2023年7月にFederUnacoma会長に就任して初めてのEIMAになりますが、まずはEIMAの概要について教えてください。
 マスキオ ありがとうございます。また、EIMAにお越しいただき感謝いたします。会長に就任して初めてEIMAを開催することができ、素晴らしい経験になっています。2年に1度開催されるEIMAは世界で最も国際化された農業と園芸の機械展示会であり、メード・イン・イタリアの技術を展示する国際見本市になります。
 EIMAには、14の商品部門があり、(1)エンジン(2)土地造成および林業機械(3)トラクタ、歩行型トラクタ、モーター式芝刈機、多目的農業用車両、モーター式鍬(4)土壌作業、播種、肥料散布装置(5)植物および作物保護機器(6)灌漑設備(7)収穫機械(8)調製加工・保管関連機械(9)畜産設備(10)農業機械(11)農用運搬機器(12)コンポーネント、アクセサリ、スペアパーツ(13)園芸および公共緑地用機器、小型動力および手動機械(14)農業用、家畜管理用、家畜小屋清掃用の各種機械、農業用再生可能エネルギーによる発電用機械・装置―のそれぞれにおいて、全大陸に至る50カ国からの海外675社を含めて1750社が出展し、6万モデル以上の最新の農業や造園に関する機械・設備・部品などが揃います。会期中は欧州をはじめ、北米、南米、オーストラリア、アジア、アフリカに至るまで、世界中の150カ国からゲストが来場します。今回の来場者数は、前回のEIMA2022における32万7000人を超えると予想しています(※編集部注:EIMA2024来場者数は34万6800人)。
 農業機械化は今後も世界的な成長が見込まれ、EIMAのような見本市イベントが非常に重要であると考えます。
 ――世界の農機市場の成長についてどうみていますか。
 マスキオ まず、世界の経済と農業の見通しをみてみましょう。産業界は地政学的な要因などによる原材料およびエネルギーの価格高騰に悩まされているものの、2024年末における世界のGDP成長率は3・2%と予想されています。重要なポイントとなるのはインド6・7%と中国4・9%で、米国は2・6%、欧州は0・7%と地域差がみられるものの、世界全体では前年3・3%と同水準になる見込みです。そして、2024―25年の世界の農業生産についても前年と同程度の生産量になると見込まれます。豪州の小麦、米国のトウモロコシ、インドの米などは好調となったものの、欧州全体の生産量は7%減と減少見込みになりました。
 そうした事情を踏まえて、農業機械の世界市場をみると、2023年の国際農機市場は約1640億ドルで、そのうち農業用トラクタが570億ドルと約4割を占め、その他の機械・設備が730億ドル、部品が340億ドルでした。それに対して、2024年上半期における世界のトラクタ販売は前年比12%減と厳しい結果でした。特にロシア32%減やアルゼンチン31%減、オーストラリア30%減、日本28%減などが大きな減少となりました。その背景には、機械設備のコスト上昇や1次産業の減収傾向などがみられ、新技術導入に対する投資の削減があったからだと考えられます。この傾向は2024年通年でも同様で、世界のトラクタ販売は200万台程と予想され、2017~23年における平均トラクタ販売台数220万台に比べて減少するとみられます。
 では、今後の見通しはどうなるのか。農業機械の売上げの減少は様々な要因によるもので、実際の需要が減ったわけではありません。実際、農業は急速に発展しており、FAOのデータによると、世界の生産量は増加が見込まれ、将来的に機械需要も増加する見込みです。2050年には現在耕作されている農地面積16億ヘクタールに比べて、さらに約5億9000万ヘクタール以上が必要となり、数十億人増加する人口の食料生産の一部を賄うとみられています。
 また、面積拡大とともに求められるのは収量の増加で、世界の農作物生産量の増加の8割は、収穫量向上によるものとみられています。特に低所得国および中所得国における技術と栽培方法の改善によって小麦やトウモロコシ、米およびその他の2次穀物の増収が見込まれています。地域別にみると、中国をはじめとする東アジアは人口減少や所得の伸びの鈍化などに伴い、経済成長が減速しているものの、南アジアや東南アジア、サハラ以南のアフリカの生産増加が著しく、2033年までの世界の農業生産量増加の多くの割合を占めるでしょう。
 そうした見通しに加え、世界農業が直面する課題は深刻です。農地拡大のために新しい土地を肥沃にして、多様な環境と気候条件に適応する技術を生み出さねばなりません。また、世界的な気候変動が進む中で、温暖化や水資源不足の問題を解決する技術も求められます。環境問題では、化学汚染や集中的耕作による肥沃度および生物多様性の喪失を補うための土づくりも重要になるとみられます。
 これらの解決を図るためにも、革新的な栽培方法と最先端の機械技術の進歩が求められ、農業の機械化は今後ますます重要になり、成長していく運命にあると考えます。単純かつ直線的な成長を描くものではないものの、業界のステークホルダーが連携し、様々な機能を発揮していくことになるでしょう。
 トラクタの国際貿易データは、過去15年間で年率4・7%の成長を示していますが、機械の需要はさらに伸びるでしょう。これまでの重要な農機市場がインド(2023年登録トラクタは90万台以上)、中国(38万台)、アメリカ(25万台)、ヨーロッパ(15万8000台)の4大市場に集中しているとすれば、今後はブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、インドネシア、トルコ、アフリカ、その他多くの国々で機械の需要が高まるでしょう。
 そして、EIMAのような国際見本市イベントが非常に重要な理由はここにあると思います。農業の機械化は技術的なサポートであるだけでなく、経済政策の手段でもあり、農業と産業経済を決定する変数の1つであり、これからさらに開放的かつ協力的な状況で発展できると考えます。
 ――EIMAの目的と今回のテーマを教えてください。
 マスキオ 私たちの展示会は、不利な経済状況や国際市場の不確実性など、非常に困難な時期に開催されるものでありますが、農業に携わる人なら誰もが新しい技術が不可欠であることを知っているでしょう。農業機械産業の任務は、世界の全地域に存在する異なる農業モデルに対して、カスタマイズされたソリューションを提供すること。様々な環境に適した機械を導入できるようにすることが農業機械化の課題の1つです。
 その点において、EIMAはあらゆる農業モデルに革新的な技術を提供し、経済評価や技術の焦点、国際的なトレーニングの取り組みを提案するとともに、機械化がいかに総合的なプロセスであり、ともに克服すべき課題であるかを示していくものです。
 そして、今回のEIMA2024のテーマは「イノベーション・ファクトリー」。EIMAはまさにイノベーションを形にする工場です。未来の課題に対する答えであり、私たちの世界であり、重要な工場です。なぜなら、主要な農業の課題に対処するために必要な技術的ソリューションが提供される場所だから。さらにEIMAは出会う場所として、国際的に高い評価を得ている見本市であり、業界の基準点であり、ビジネスイベントであり、大きな会合であり、必見のショーなのです。
 世界の政策立案者や科学者は気候変動や環境問題といった地球の最重要課題に対処するために、農業に注目をしています。これらの新しい課題を解決するには、産業とエレクトロニクスによって開発された技術革新が必要です。そして、そのために、企業や大学、研究・研修機関、政策立案者、情報機関の多くの関係者がこのEIMAに集まります。彼らは皆、巨大な「イノベーション・ファクトリー」において解決策を見つけるプロセスに期待しており、EIMAはそれについて実際に貢献するでしょう。提供されるソリューションを間近で見て、投資を計画すること、イノベーション・ファクトリーの中心に立って積極的な参加者になることが重要です。
 ――そうしたイノベーションの評価という点で、EIMAではテクニカル・イノベーション・コンテストの表彰も行っていますね。
 マスキオ その通りです。我々は1986年以降のすべてのEIMAイベントで、農業および園芸分野のメーカーが発表した革新的な製品を表彰するテクニカル・イノベーション・コンテストを後援してきました。過去5回のイベントでは、680件以上の応募があり、そのうち132件が「技術革新賞」を受賞し、さらに260件が「佳作」を受賞しています。2024年のコンテストは20の「技術革新賞」、48の「佳作」の合計68の革新的なソリューションが受賞しました。
 同コンテストは、イノベーションについて語り、テクノロジーが生産性と持続可能性の課題にどのように対応するかを考察し、研究をいかに支援するかを考える理想的な機会になっていると思います。昨今の技術革新のトレンドとしては、電動化や駆動システムの開発、センサー活用とデータ駆動、ISOBUS通信プロトコルなどがあげられます。今回の受賞はトラクタから作業機、ICT機器、各部品まで、EIMAに存在する幅広い製品がラインアップしており、今回のEIMAでは入口に「技術革新賞」受賞製品が展示され、来場者を迎えます。
 また、EIMAでは様々なイベントも行われ、トークショーやセミナー、記者会見、会議をはじめ、5日間で農業の最新動向を取り上げる150の会議が開催され、見どころとなっています。
――最後に、日本の農業機械および農業機械メーカーについてコメントをお願いします。
 マスキオ 例えばクボタはイタリアの会社も買収していますので、私達にとって非常にゆかりのある重要な会社です。
 日本の農業機械のイメージは、非常にポジティブです。それどころか、私は日本企業からいろいろなことを学ばなければならないと思います。
 数多くのイタリア企業が日本で仕事をしたり、日本企業と提携したり、共同で事業を進めたりしていますが、日本企業は、指導者に対して教えることができるうえ、品質の高さと精密さということに対して本当に卓越しています。これは個人的な意見なんですが、そういったものをイタリアの企業は学ばなければならないと思っています。 
 イタリアでも15以上の農機企業が日本とコラボレーションしており、そのおかげで精度や品質が大きく向上しました。それは日本企業がイタリア企業に教授してくれたおかげだと思っています。
 ――有難うございました。

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