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令和7年1月6日発行 第3534号 掲載

三菱マヒンドラ農機 齋藤徹氏/新春トップインタビュー

 ――昨年の振り返りからお願いします。
 齋藤 弊社にとっては一言でいったらかなり厳しい年でしたね。我慢の続いた年だったといえると思います。私たちの会社は農業機械事業が売上げの90%以上を占めますが、日本の農機市場と海外売上高の大部分を占める米国のホビートラクタ市場、その両方とも冷え込んでしまった。
 米国のホビートラクタは2021年、私がこの会社にお世話になった最初の年に9500台を上回る輸出台数の過去最高記録を打ち立てました。しかしその翌年、上海ロックダウンがあり、その頃からFRB(米連邦準備制度理事会)が金利を急激に引き上げ始めた。それで一気に市場が冷え込んでしまった。
 国内でも本機は厳しい市況が続きましたが、それ以外の提携商品、アフターサービス、中古などが支える形で、売上げ全体では微減でした。
 ――米国以外は。
 齋藤 米国の落ち込みを補うまではいきませんが、韓国向けの大型の田植機(XPSの韓国仕様)を200台強出荷しましたし、また以前から種まきをしている欧州向け小型トラクタ(26馬力)は大きく花を咲かせるまでは行っていませんが、少しずつ台数を伸ばしています。最近ではトルコが農業大国ですが、昨年前半から26馬力のトラクタを出しまして、現地の評判は上々です。昨年末に100台出荷しました。一定の台数が見込めると期待しています。
 ――高速ディスクハローの「KUSANAGI」はいかがですか。
 齋藤 おかげさまで大変に評判がいい。順調に伸びて、売上げ増に貢献しています。あと作業機でトルコから大型のディスクハローを輸入していますが、加えて親会社のマヒンドラ&マヒンドラ社(M&M社)から日本で売れそうな作業機を複数選んで、本年以降に日本に導入しようという企画もあります。
 ――どのような機械ですか。
 齋藤 まだ具体的には申し上げられませんが、複数の商品を日本市場に順次投入する予定です。インド製ですからコスト競争力があって、価格が非常に安い。農家経営は楽ではない。スマート農機もいいのですが、価格が上がって多くの農家はなかなか買えない。値段を抑えた商品をいかに供給するか、これは大事なことです。例えそれが大型農機やスマート農機でなくても、日常の農作業で必要になるシンプルな機械でも、安く求めたいという向きがある。これに応えられるのは私たちの強みです。インド製で良質な、廉価な作業機を日本のお客様にお届けしたい。今年から順次投入していきます。
 ――大事な視点です。ラインアップの強化にもなりますね。
 齋藤 それとKUSANAGI―Ⅰ(ワン)の評価が非常に高いので、ディスクハローのレンジを強化しようということで、今年第2弾としてもう少し大きなサイズのディスクハローを投入する予定です。いまのKUSANAGIは60馬力まで対応できます。ただ、その上のゾーンで対応できる製品がほしいという声も強くいただいている。要望に応えるべく準備をしています。
 ――今年は御社が発足して10年です。そのグループシナジー効果、そして次の課題は。
 齋藤 経営方針としてグループシナジーの最大化を目指しており、双方向でシナジーが出ていると思います。まずM&M社に出ている効果は、グローバル小型トラクタ「OJA」シリーズをインドはじめ、米国などグローバルに導入しています。この技術・ノウハウは弊社が提供しています。私たちの持っているノウハウをベースにグローバル向けにトラクタを開発し、その他、汎用コンバイン、田植機も私たちが提供したライセンスでM&M社が現地向けに適応開発を進めています。
 ――御社への効果は。 齋藤 私たちが得たベネフィットは何かというと、M&M社のトルコのグループ会社・エルクント社から大型のディスクハローやディープチゼルを持ってきました。今まで日本になかった輸入商品ということで、北海道中心に売れました。また、M&M社はインドに強いサプライヤーネットワークを持っています。そこからローコストな部品を調達してうちで使う。輸出車のエンジン然り、他にも活用できるものはM&M社から輸入して生産に使っています。また、IT関連では3D図面データの応用的活用はM&M社が入ってきてから進みました。
 ――今年の目標は。
 齋藤 今年の計画は策定中です。昨年は我慢の年でしたが、市場は日本、米国とも回復していくという期待はあります。昨年導入した新型の小型トラクタ、KUSANAGIの第2弾等々、新製品をテコに反転攻勢をかけていきたい。加えて、大型トラクタのCASEがあります。昨年6月に日本におけるディストリビュータ契約を締結しました。本州を含めて広くCASEブランドを拡大していきます。売上げを伸ばす大きな柱です。
 ――今年は「弾」が揃っていますね。
 齋藤 従来以上に三菱ならではの商品、三菱しか持っていないユニークな商品にフォーカスしています。その1つの事例が紙マルチ田植機です。他社にないうちだけの商品です。国の「みどりの食料システム戦略」で示されている環境と調和のとれた産業への転換という方針もあって追い風が吹いています。
 とくに、西日本の中山間地はスマート農業のトレンドの中で置いてきぼりになっているのではないかと危惧しています。付加価値の高い米づくりで規模の小さい農家でも生きていける。それは有機米が有力な選択肢になると思います。
 ――施設園芸への取り組みは。
 齋藤 イチゴの周年栽培を可能にする施設を三菱重工・冷熱部門とのタイアップで開発しました。大量にイチゴを必要とする某大手企業と契約して、いま新しいイチゴの周年栽培の施設を造っています。通年栽培が可能になりますから供給も安定するし、夏秋でも品質の高いイチゴを流通できます。
 ――製造現場改革は。 齋藤 昨年、島根の製造部門担当役員として、自動車業界から人材を登用しました。彼のリーダーシップで生産性の改善、現場改善にものすごい力を入れてやっている。それが工場のコスト競争力向上にかなり寄与している。一昨年から私も出席して現場改善発表会を四半期に1回実施して改善事例を発表しています。1回で20事例くらい報告があります。1件1件のコストダウンは大したことありませんが、それが何十件と積もると、何千万、何億円となります。あと開発生産のプロセスの効率化のためのPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメントシステム)を導入しました。その他、ジェネレイティブ・デザインというAIを使った設計にも取り組み、設計時間の大幅な短縮につながっています。
 ――ありがとうございました。

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