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令和7年1月6日発行 第3534号 掲載

井関農機 冨安司郎氏/新春トップインタビュー

 ――まず昨年の振り返りからお願いします。
 冨安 国内市場では、米の民間在庫の逼迫を背景に、年央以降、米価が上昇し、担い手層向け大型農機を中心に需要が回復しました。また、改正された「食料・農業・農村基本法」では、食料安全保障が基本理念の柱として打ち出され、農業の生産性向上に向けた「スマート農業技術活用促進法」も制定されました。
 海外市場では、北米・アセアンが軟調に推移しましたが、欧州が好調を維持し全体を牽引しました。
 このような中、昨年は聖域なき構造改革「プロジェクトZ」に全力投入した1年でした。
 ――プロジェクトZによる改革の進捗状況は。
 冨安 まず、創立100周年を迎える今年を「次の100年」への礎づくりの年と位置付けています。
 「農家を過酷な労働から解放したい」という創業者の思いから始まった「お客様の課題を解決する」という精神が我々の根底にあったことが、100年もの間、事業を継続できた最大の要因だと考えております。守るべきものを守り続けるために、我々は変わらなくてはいけない。長期ビジョンの実現に向けて、「プロジェクトZ」で筋肉質な企業となるための体質転換を「ZERO」から図っています。
 このプロジェクトでは、短期集中の「抜本的構造改革」と同時並行的に次の100年への礎づくりとして、国内外の成長市場へのリソースを集中させる「成長戦略」を進めています。
 抜本的構造改革では、「生産最適化」、「開発最適化」、「国内営業深化」の3テーマを軸に推進中です。
 「生産拠点の最適化」は、製造所の強靭な体質づくりに向け、生産拠点・機種の再編を行います。具体的には、組み立て拠点の集約を行い、生産性向上、生産効率化、生産平準化を図ります。第1弾として、2024年7月に井関松山製造所と井関熊本製造所を経営統合しました。熊本のコンバイン生産移管については、2025年末生産終了までの体制を含めて大きな混乱なく進めています。今後、2026年初を目途にコンバイン組立てを松山に移管。さらに新潟への油圧機器等部品生産を集約後、田植機組立ても松山に移管します。これは次の100年の礎となる重要な取り組みです。
 「開発の最適化」は、製品変動費の10%削減を図るべく、短期集中的に注力しているものですが、これらの効果は2025年後半以降に現れてきます。まず、機種・型式の30%削減は目途が立ち、現在、一部は実行フェーズに移行しています。また、部品の共用化や見直し、製品の母体を共通設計として、地域により異なる部分を専用設計とするグローバル設計といった開発手法の変革と併せ、引き続き製品利益率の改善を図っていきます。開発機種の集約や共通設計により開発の効率化を推進し、開発リソースの成長テーマへのシフトを進めていきます。加えて、生産最適化との相乗効果も生み出します。
 「国内営業深化」としては、2025年1月に国内販売会社の7社を経営統合し、ISEKI Japanを設立しました。経営資源の集中・再配分による経営効率の向上、在庫・拠点運用の最適化、物流体制見直しによる物流費の圧縮を図るとともに、成長戦略への基盤を構築します。
 これらの施策の効果が現れるには時間を要するものもあるため、完遂時期を2027年としていますが、2024年と今年の2年間の短期集中での取り組みが重要になります。不退転の決意で変革を進めているところです。その進捗については、2月の本決算の際に改めてご説明する予定です。
 ――国内海外それぞれの成長戦略を教えてください。まず海外から。
 冨安 4年前まで25%もなかった海外売上高比率が現在、3分の1程度まで上がってきています。地域別戦略と環境対応型商品の投入を含む商品戦略をさらに進め、2030年に売上高を約1・5倍の800億円まで拡大を目指します。中でも、欧州・北米市場を中心としたNon―Agri製品を成長戦略の重要なセグメントと位置付けています。
 欧州は、ビジネス進出から50年以上の歴史があり、最もISEKIブランドが定着している市場です。当社の景観整備商品の強みを活かしながら、環境対応型商品の拡充を含め、さらなる商品競争力の強化を図っていきます。地域戦略として、好調なISEKIフランス・ドイツに加え、この度、イギリスのPTC社を連結子会社化し、欧州事業の次なる成長ステージを目指します。
 北米のコンパクトトラクタ市場の需要はここ10年急速に拡大してきましたが、2022年以降、調整局面に入り、2024年は15万台レベルを見込んでいます。動向を注視しながら、AGCO社との連携を一層強化し、新商品の投入による拡販と併せてシェア拡大を目指していきます。
 ――続いて国内の成長戦略を。
 冨安 農業の生産性向上を目的に「大型」、「先端」、「畑作」、「環境」分野に注力します。スマート農業普及推進上の課題として、スマート農機の低価格化や熟練農業者の技術の見える化、オペレーションのノウハウ、データの活用などの課題があります。当社の強みである「人的ノウハウ」、「大型輸入作業機」、有機農業や可変施肥技術をはじめとする「環境技術」を増幅させながら、大規模農家への提案力やグループ内ノウハウの共有を進めていきます。 
 2024年4月に発売した国内最大クラス123馬力の有人監視型ロボットトラクタは、北海道を中心とした畑作の管理作業にも適した商品です。今後、完全無人化を含めた「自動化」への取り組みを進め、普及拡大に貢献していきます。
 ISEKI Japanに「大規模企画室」を新設し、人材育成に加え、担い手・企業向けB2Bビジネスにも着手していきます。
 環境・先端については、「みどりの食料システム戦略」に即した環境負荷低減と、生産性向上を通じた持続可能性の両面に重点を置いた「環境保全型スマート農業」に注力していきます。その象徴が、昨年12月に発表した新型のアイガモロボです。水稲有機栽培は10アール当たりの所得が慣行に比べて3倍高くなる一方で、雑草管理時間は約5倍にのぼります。新型では、お客様の声を基に、圃場適応条件の拡大に加え、機能性向上、操作の簡易化、低価格化等を(株)NEWGREENと取り組みました。
 また、可変施肥技術を搭載した商品ラインアップを拡充していきます。2016年の可変施肥田植機を皮切りに、スマート追肥システム搭載の乗用管理機やJA全農が推奨する「ザルビオフィールドマネージャー」等の施肥マップと連携したトラクタや田植機などの様々な可変施肥技術を搭載した商品提供を通じ、品質向上とコスト削減をサポートしてきました。さらなるラインアップ拡充に向けて、施肥マップ対応のトラクタ作業機や国産の農業用ドローンの取り扱いを開始していきます。
 当社のコア技術を高めつつ、自前主義にこだわらず外部の専門性の高い技術やアイデアを積極的に取り込み、新しい価値を創造していきます。
 ――人材戦略については。
 冨安 プロジェクトZ完遂のためには、従業員一人ひとりの能力を向上させ、グループ力を最大化させることが重要です。変革をリードできる人材がカギとなります。従業員全員が同じ目標を持ち、主体的に取り組んでいけるようにするため、従業員とのコミュニケーションや組織再編、人員構成の最適化、多様な人材登用、教育プログラムの充実などを行い、人的資本投資による組織力の向上と成長に必要な人材の確保に努めています。
 ――農機業界の役割をどうとらえていますか。
 冨安 世界人口の増加、食料安全保障等の社会課題においても、食料増産ニーズに対応する農業の生産性向上が求められています。また、農業や景観整備事業は、人々の生活に必要不可欠なエッセンシャルビジネスとして再認識されており、我々井関グループの果たす役割は大きいと考えています。
 100周年のスローガンでも掲げている「Your essential partner」として、この先の100年も、かけがえのない存在でありたいと考えております。持続可能な社会を支える皆様のそばで、引き続き、豊かな「食と農と大地」の創造に貢献していきます。

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