MENU
令和7年1月6日発行 第3534号 掲載

ヤンマーアグリ 所司ケマル氏/新春トップインタビュー

 ――まず、社長に就任した初年度の所感から。
 所司 私はヤンマーアグリの社長に就任する前は、ヤンマートルコ機械(YANMAR TURKEY MAKINE A.S.)に勤めていました。トルコは年間7万台のトラクタを販売する世界で4番目に大きな市場ですが、私が入社した2016年に、アグリ事業はありませんでした。そこで2017年にヤンマートルコ機械を立ち上げ、トルコだけでなくヨーロッパやアフリカ、中央アジアやインドなど様々な国でアグリ事業を展開し、農機のことを学びました。
 そんな中、日本の市場については、そういった国々とは全く違う印象でした。日本では、なるべくお客様に作業負担をかけず、わかりやすく使いやすいものを、高品質で提供するために国内で開発が行われており、それが日本の強みだと感じました。海外ではそういった考え方は浸透していません。これを組み合わせることが、私の一番のチャレンジだと考えました。日本の農家の皆様は、ヤンマーがどういった企業で、どんな製品を作っているのかをよく知っている。この認知度の高さを、海外においても確立するという目的を持って、アクションを始めている最中です。
 弊社の一番の強みはやはり技術力と生産力です。これを国外にも展開することに力を入れています。海外とひと口にいっても、様々な国があり、何百万人の人がいて、土も違えば生産している作物も違うので、それらに見合う営業力も必要となってきます。
 ――24年度を振り返って。
 所司 国内の上期(4~9月)は目標を達成できませんでしたが、9月以降は実績が上向きました。上期で減少した分、下期では挽回し、台数計画の達成は厳しい状況ですが、売上金額では計画を達成していきたいと考えています。
 ――25年度の展開と、スマート農機について。
 所司 24年はアメリカの実績が落ち込んだので、それを盛り返すべく、25年は様々な仕掛けを実施していきます。アメリカ市場全体は23年に比べ減少しました。大手メーカーに比べたら私達への影響は少ないかもしれませんが、工夫して乗り切らないといけません。
 日本の農機市場だけでなく、海外でのチャンスを逃さないことが重要だと考えています。日本の優れた点はお客様のために尽くす技術力で、それが世界においての強みだと私は確信しています。それを更に強化し、弱点は補強する。そういったことを実行する時期です。日本では高齢化が進み農業従事者が急激に減少していますが、食べる人の数は減ってません。今、必要とされているのは、スマート化と大型化です。そしてこの先、海外の様々な国でも、日本と同じことが起きる。そのときに日本で培ったものが、海外で強くなっていくでしょう。プライドを持って、良い部分をフォーカスしようと思います。
 ――今後の展望は。
 所司 私の目標は、この先5年間で海外の売上げを2倍にすることです。それと並行して、我々は30年に向けた中期戦略も作成中です。ヤンマー全体の海外売上げ比率(ヤンマーホールディングスの24年3月期の海外比率は61%)くらいまで、アグリ事業も追いついていこうと考えています。この技術力を持っているのに、アグリ事業のウエートが低いことがおかしい。今まで日本に集中し、海外展開が遅れたことや、市場にマッチする製品がなかったことがその原因です。国内で培った先進技術、お客様への営業対応力、ソリューションなど、これらを海外で活かし展開することが最も重要です。
 そして、次に力を入れているのは、優秀な人材を海外で育てること。日本から人材を派遣するのではなく、現地で人を育てる必要があります。人材育成に関しては、私のトルコでの経験も活かせると思います。トルコは人口の約3割が農業関係に従事しています。生産する作物も多岐に渡り、トラクタメーカーは約50社あり、競争が非常に激しい。ビジネスのやり方も特殊です。私はチームを作り、そのモチベーションを上げるため、日本やアメリカ、ブラジル、インドなど、様々な国で研修を行い、スタッフがヤンマーのような大きな企業で働いていることを理解するために投資しました。アグリ事業は世界で8000人のスタッフがいます。この大きな家族の一員だと認識したスタッフは、優秀な人材になりました。日本のスタッフに対しても私の経験をシェアし、世界で活躍できる組織を作りたいです。
 高品質でコストパフォーマンスの良い製品でも、それだけでは農機は売れません。お客様が、何が必要なのかをよく理解した上で、製品やサービスを提供することが必要です。今まで国内の特販店、海外の現地法人、ディストリビューター、ディーラーを参集して、神戸にてグローバル大会を開催していましたが、昨年の11月に初めてトルコでディストリビューター大会を開催しました。15カ国から参加者が集まり、そこで初めて「不可欠なパートナー」の説明をしました。ヤンマーがお客様にとって不可欠なパートナーになるだけでなく、農家や販売会社の皆様も、私達にとって不可欠なパートナーとなる。同じ目線で力を合わせることが重要だと伝えました。
 これは、ある本の受け売りですが、私は自分のことをバスのドライバーだと考えています。スタッフは乗客です。どこに向かうのかわからないバスには誰も乗らない。ドライバーは次の駅を明確に言わないといけません。リーダーシップとは、それを言う役目だと思っています。そうすることで、全てのアクションは目的のためだと理解してくれると信じています。
 ――最後に、日本での生活などについて。
 所司 配偶者はトルコ人です。息子が2人います。私の父はトルコ人で、母は日本人です。だから日本語を学ぶことができました。息子たちも日本語を勉強し始めましたが、学校では英語、家庭ではトルコ語で会話をしているので、日本語の家庭教師を雇うことにしました。日本に来て懐かしく感じるのはトルコ料理でしょうか。私の子どもたちは日本の料理が大好きで、2人で米を4合も食べるので、いつも私たち夫婦の食べる分が少なくなります。
 ――ありがとうございました。

カテゴリー別最新ニュース