直播進め稲作を効率化:藤代ライスファーム/新春特別企画

労働力不足の懸念が広がっている国内農業。そのカバーに機械は大きな役割を果たす。今回訪ねた藤代ライスファーム(茨城県取手市)は、地域農業維持を目的に設立された稲作専業の農事組合法人。規模拡大とともに、慣行の移植栽培に直播を組み合わせ、省力化・効率化を追求している。今年は直播面積を増やす方針で、狭い圃場でも均平作業を有効に進めるべくスガノ農機の新製品レーザーレベラーL20(作業幅2メートル)を導入。スマート農業技術を含め新技術採用で活路を拓く同ファームの今をルポした。
都心まで電車で1時間を要さず、通勤圏としての利便性や暮らしやすさを掲げて、ほどよく絶妙とりでとアピールする茨城県取手市。とはいえ都内から水戸街道(現・国道6号線)を走っていくと、同市周辺では左右にけっこうな水田が見られる。統計によれば、農業経営体数は800ほどで、耕地面積2170ヘクタールのうち水田は約97%と、圧倒的に田んぼ農業の地域柄。
農業組合法人藤代ライスファーム(寺田和二代表理事・取手市宮和田)は、同市東部に位置し、やはり米100%の営農。4農家の出資により2012年に発足した。寺田代表と懇意だった土建業と農業を営む前社長との間で、宮和田新田の農地を守りたい強い思いが結び合い、また経理事務や設備投資の合理化を狙って法人化に至った。
昨年の作付面積は35ヘクタール。出資者それぞれが3ヘクタール程度の自作地を持ち、当初は15ヘクタール規模でのスタートだったが、「やりますよといえばいくらでも農地が集まった」(寺田氏)周辺事情から、現在の水準まで拡大した。労働力は寺田氏を含め2人。田植えと収穫時期は土建屋さんから2人が派遣されるが、従来の移植栽培だけでは対応しきれない。そこで7年前から直播に取り組み、それに併せてプラウ、バーチカルハロー、牽引式レーザーレベラーを導入した。直播は鉄コーティング種子を用いる湛水直播。
昨年の直播面積は約8ヘクタール。今年は10ヘクタールまで増やす方針で、その備えとして新たに作業幅2メートル、トラクタ適応馬力45~60PSの小型直装式レーザーレベラーを購入した。田が乾く1~2月に初稼働する予定で、今は乾燥調製施設内に真っ白なまま保管されている。
同機は、スガノ農機(株)(茨城県稲敷郡美浦村)が昨年5月に発表した新製品。従来の直装式で必要だったトラクタごとのコントローラーが要らない専用コントローラー(本体制御)を装備し、質量や馬力が適応するトラクタならどんなトラクタでも取り付けが可能。とくに作業幅2メートルタイプのL20は、中山間地などの狭小圃場でもラクに均平作業に取り組めるという新しいコンセプトに基づき開発された。
直播について寺田氏は、「ラクで、直播様々だよね。最初に一部雑草で苦労したけど、あとは問題ない。また3年ぐらいはコシヒカリでやってて、倒伏しやすいから肥料をあまりやらずにいたんだが、収量が7俵以上いかなくて、品種をゆめひたちに替えて移植と同程度の施肥にしたら10俵くらい、移植と同様の穫れ高になった」と。
さらにレベラーの効用については、「これまで苗立ちが悪いことはなかったし、田が平らだと除草剤の利きもいい。レベラーをかけると田が締まるんで、水持ちもよくなる」と話す。今回の直装式L20の導入に関しては、「10アールくらいの田んぼでは、牽引式ではうまく回れない、あるいは小さい田を大きなトラクタでやると高低差や凹凸が出る場合があるので、小さな圃場でも直播を進めるためにうまくレベラーをかけたい。それで新たに買い入れたんです」とのこと。
同行した(株)関東甲信クボタ取手営業所の石山英也係長は、「小規模農家が従来通りに機械を揃え稲作をやっている地域だが、今後の後継者の問題は大きい。若い人が農業をやるよと手をあげると、あっという間に農地が集まる」と現状を説明し、地盤の関係で合筆もうまくできない地域だけに、狭小圃場でも均平作業ができるL20は、「我々にとってありがたい商材」と評価する。
寺田氏はこれからの藤代ライスファームの道筋を「労力からいって、頑張ったとしても50ヘクタール以内でしょう。それ以上になると米の品質を保つのが難しくなる」と示す。食味・収量センサを備えるコンバインのデータを基に可変施肥に取り組み、営農支援システムKSASは初期の段階から利用している同ファーム。同氏は、「現時点では田の水管理と草刈り作業の効率化が課題」と指摘した。少数精鋭でできる50ヘクタール稲作―その実現に向け、新技術への関心は留まることがない。









