天敵使って害虫防除/関東農政局・みどりの食料システム戦略勉強会

関東農政局は11月29日、みどりの食料システム戦略勉強会(第25回)をオンラインで開催した。同勉強会は、自治体、農業者・農業法人、農業団体、食品等事業者などを対象に毎月実施しているもので、今回は「化学農薬使用低減のための総合防除」をテーマにしている。農研機構植物防疫研究部門作物病害虫防除研究領域生物的病害虫防除グループ上級研究員の阿部順一朗氏が登壇し、「総合防除で野菜の化学農薬使用量の低減を目指す」と題する講演を行った。
阿部氏はまず、害虫防除法には▽網などで侵入を防ぐ物理的防除▽品種改良や栽培方法の改善で害虫の生存や繁殖を難しくする耕種的防除▽農薬をまく化学的防除▽天敵を使う生物的防除―の4つがあるとした。今回のテーマとなっている「総合防除」とは、これら4つの防除法を矛盾しない形で適切に組み合わせ、環境に負荷が少なく、かつ病害虫の発生を経済的被害が生じるレベル以下に抑制する体系技術であると解説。最近は、害虫の薬剤抵抗性が発達していることや、生産者の農薬散布の労力を軽減させるため、特に生物的防除への関心が高まっているとした。
続いて、普通の虫が害虫になってしまうメカニズムを考察。人間が広い場所で同じ種類の農産物を作り続ける畑やハウスなどは、虫にとってまさにお菓子の家のようなものであるとし、そこには天敵もいないので、快適そのものだと指摘。住み放題、食べ放題、産み放題の環境下で増え続け、ただの虫が害虫になってしまうのだと説明した。
そして、自然界では天敵の存在により特定の生物が増え過ぎることはないという点に着目。この自然界の仕組みを害虫防除に応用するため天敵の生態を研究するうちに、天敵昆虫は害虫を主食とする一方で、特定の花などを補助食にしていることが多く、その花粉や蜜を食べることで発育や増殖が向上し活性化することや、巣や隠れ場所となる植物の存在がわかってきたと説明。このことから、圃場の多くは単一栽培が基本だが、天敵昆虫が活躍するためには、その昆虫が好む植物(天敵温存植物)を植えることが有効であるとし、天敵温存植物によって快適な環境を作ることによって、天敵昆虫の生存、産卵、寿命、行動の改善を図り、害虫抑制効果の向上が期待できるとした。
事例として、鹿児島県のオクラ栽培におけるアブラムシ対策の効果検証データを提示した。天敵温存植物として、栽培時期前半はカラシナ、ハゼリソウを、後半はソバ、ソルゴーを導入したところ、土着の天敵昆虫が活性化し、アブラムシを問題にならないレベルにまで制御できたことを示すとともに、「アブラムシの防除に関しては革命的」とする生産者の声も紹介した。
阿部氏は、現在取り組んでいる課題として、▽天敵温存植物の播種を一度で済ませられるような、より簡便な技術開発▽慣行栽培とは害虫の種類が全く異なる有機栽培への応用―などをあげた。さらに、単一栽培の畑やハウスに天敵温存植物を導入することで景観が華やぎ、魅力的な農業や農業従事者へのアメニティ効果にもつながるとして、生物的防除技術のさらなる普及促進に意欲を示した。









