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令和6年12月2日発行 第3531号 掲載

農研機構九州沖縄農業研究センター所長・澁谷美紀氏に聞く/九州特集

 今年4月、農研機構九州沖縄農業研究センター(※以下、九沖研)の所長に就任した澁谷美紀氏は、前任の勤務地が北海道だった。「九州と北海道、どちらも日本の食料基地ですね」と、にこやかに語り、「九州は二毛作や二年三作が行われるなど耕地利用率が高く、それゆえ、例えば乾田直播の普及には、麦類収穫からの作付け切り替えが短期間に実施できる漏水対策が必要になるなど、作業を効率化する様々な技術開発が重要だと感じました。経営規模の拡大が進む中、農地の高度利用に適用できる省力化技術が欠かせないと痛感しています」と、新天地の印象について語った。
 同氏に九沖研の所長としての抱負を尋ねると、まずは農研機構の目標である、(1)食料自給率向上と食料安全保障(2)農産物・食品の産業競争力強化と輸出拡大(3)生産性向上と環境保全の両立に貢献すること、と前置きした。 その上で、2021年からの第5期中長期計画期間における九沖研のテーマを「農地フル活用による暖地農畜産物の生産性向上と輸出拡大」と説明し、「中長期計画期間の4年目にあたる今年度は、これまで進めてきた研究の成果を社会実装に移していくフェーズだと認識しています。化学肥料を低減した畜産飼料の栽培技術や南九州の生産額が大きいサツマイモの基腐病対策技術、子実用トウモロコシを取り入れた輪作体系化やイチゴの精密栽培技術などを実用化し普及させていくことが焦点となります」と話した。
 例えば、「家畜ふん堆肥等の有機質資材の肥効を予測するアプリ」(※「有機質資材の肥効見える化アプリ」とウェブ検索すると、農研機構サイトのコンテンツで、窒素量が計算できるシステムを使用することができる)による飼料生産費の削減効果などを現地圃場で検証する。また、大豆の湿害軽減と播種作業の高速化を実現する「ディスク式高速―工程播種技術」による農機が既にメーカーから販売されているので、それらの適用条件や効果を明らかにする。現地実証を通して技術改良と普及を図るなど、やるべきことは満載だ。
 今年10月1日、「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(スマート農業技術活用促進法)」が施行された。これにより農機メーカーや大学、スマート農業技術のサービス事業者などは「開発供給実施計画」を申請し、認定を受けると、農林水産省から支援を受けることができる。
 同氏はこれについて「支援の一環として、農研機構の設備使用や専門家の派遣などもあります。九沖研では、筑後の研究拠点に供用できる設備や、ロボトラなどのスマート農機が稼働できる圃場の整備を進めています」と話した。続けて「スマート農業技術の活用を進めていくには、皆様と意見を出し合いながら、様々なアイデアを取り入れることが重要だと考えています。認定を受けて、ぜひ支援を活用してください。一緒に研究や開発を進めていきたいです」と、前向きに語る姿が印象的だった。
 【澁谷美紀氏略歴】熊本県出身。1991年、農林水産省農業研究センター(現・農研機構)に入省。北海道農業研究センター研究推進部長を経て、2024年より九沖研センター所長。

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