農家ルポ 児玉農場・児玉勝俊さん/北海道特集

児玉農場の児玉勝俊さん(35歳・河西郡芽室町)は、妻の和歌子さん、父親である典己(よしみ)さん、母親の幸子さんの4名で営農している。帯広農業高校を卒業後、自動車整備の専門学校に2年間通った後、21歳で農家だった父親の元で就農した。「家を継ぐ気はなかった。恥ずかしい話だが、ちゃんと就職活動をしなかった。ひとまず家を手伝いながら就職先を見つけようと思った」と笑いながら赤裸々に語る勝俊さん。その後は父親の後を継ぎ、32歳で児玉農場の代表となった。
転機となったのはJAめむろ青年部の存在だ。同世代の若手農業者と交流をしていく中で、抱えている悩みが解決していったと勝俊さんは言う。十勝管内で芽室町は最も青年部所属の若手農業者が多い。「家族経営の最も難しいと思うところは、関係性が、親子からある日突然、経営者と従業員に変化すること。そのギャップに悩んでいた。それが青年部の面々と話をする中で解消していった。自分だけじゃなく、それぞれに悩んでいることがわかって少し安心した。自分自身、自覚も足りなかった」と振り返る。仕事をしていく上での関係性とそれまでとの違いに戸惑いがあったということだろう。
そして、勝俊さんは就農2年目あたりで気が付く。「同じ作物をやっている以上、土台を築いた親にはどうやっても勝てない。親が知らない新規作物を作ろうと思った」。その時、青年部のつながりが生きることになる。新規作物を作るための知識を得ることができたからだ。それをきっかけに長芋栽培に着手した。
しかし、就農から15年が経過した現在では、違う考えに帰着してきている。「今は畑作4品(小麦、ジャガイモ、豆、ビート)でやっていける農業形態がベストだと思っている」と話す。芽室町は十勝管内でみれば、大幅な大規模化が進んでいない。裏を返せば、青年部所属の若手農家が多いことからもわかる通り、後継者が他地域に比べ充実している。「やはり4品でしっかり営農できる技術を確立したい。取れないから野菜で稼ごうでは、手間が増えて、余分な機械投資が必要になる。収入が上がっても経費もあがる、これではイタチごっこになってしまう」とも。今は作物を減らす方向に持っていくことが結局は、時間と収入のバランスが良く、結果的に手元に残るお金が増えるのではないかという。人材不足の中、いくら機械化が進んでも、最後には人手が必要になるのが野菜。人間誰しもいつまでも働けるわけではない。先を見る目は至って冷静だ。
現在の児玉農場の営農規模は37ヘクタールほど。勝俊さんが就農してからの15年で5ヘクタールほど増えている。栽培作物は畑作4品に加え、ニンジン、キャベツ、長芋、ゴボウ、インゲン、枝豆など。畑作4品がそれぞれ7ヘクタールずつで、その他の野菜が各2ヘクタールずつといった内訳だ。畑作4品とゴボウ以外は勝俊さんが就農してから始めた作物だ。面積は営農を続ける限りは増えていくと見る。「何年か前までは増やしたいという気持ちもあったが、今はあまりない。40ヘクタールくらいが機械投資や自分の時間などを考えるとベスト。限られた面積の中で、収穫し切る能力や体力を考えると、畑作4品を10ヘクタールずつが最も収益性が高い。一般的には50ヘクタールを超えると、損益分岐点が変化してくると言われているので、多くても50ヘクタールくらいまでやれれば自分としては満足」と明確なビジョンを口にする。面積拡大より栽培技術の向上によって、周囲より穫れるようにしたいという。
所有する機械は品目があるため多い。トラクタはマッセイ・ファーガソンが中心。下は40PSから上は150PSまで7台。クボタも1台所有する。「管理も含めて、国産には国産の良さがある。日本の土地に合っていて、使い勝手が良い」。その他にも作物ごとにコンバインやハーベスタを所有し、相当な数にのぼる。自動車整備の専門学校に通っていただけあって、周囲よりも機械好きを自認する。ニチノー製品では、くるピタくんや草刈るチを愛用。ポテトプランタも今年の春に購入した。
ニチノー製品の印象を尋ねてみた。「ビートハーベスタは、どの収穫機よりも良い。根本的にまず壊れない。壊れても直る。今の他社製品は、高性能化も手伝って、直そうにも直せないことも多い。部品供給も含めて長く使える。土の中を通す機械としては驚異的な寿命の長さ。20年以上は使っている」と話す。海外製品は、短期間で部品がなくなるメーカーが増えていて、次々に機械を入れ替えていかなくてはならない。利用者ファーストのメーカーの存在は大きい。「草刈るチに関しては一強じゃないか。年々改良もされていく。整備性の良さも申し分ない。ビートハーベスタにしろ、草刈るチにしろ、なくてはならない機械」と述べた。加えて「芽室町の圃場が国産メーカーの機械に合わない大区画になってきていて、いずれ十勝管内も大規模化していくのは間違いない流れ。圃場の大規模化が進んでも、国産メーカーに頑張ってもらうのは重要なこと。海外製品に頼った方が良いという流れにある中、国内の作業体系において存在感を発揮し続けているのがニチノーグループだと思っている」とのことだった。
日農機の担当者についても「現担当の宮北さんも、その前の山下さん(=山下博将取締役営業部長)もビートハーベスタに関して、更新を強く勧めてくることはなかった。直せるものは直すといったスタンス」と話す。営業十勝支店帯広Aブロック営業所の宮北洋介主任が担当するようになって2年目。「宮北さんはメチャメチャまっすぐな人。すごく真面目。裏表も感じない。信頼している」と評価する。
十勝農機のポテトプランタを今年の春、購入した際のこと。「農家が春先に農機を買うのは勇気がいること。当初買うつもりはなかった。色々話をする中で、更新のタイミングも含めて、購入を決めたのは、宮北さんの後押しも大きかった」と振り返る。勝俊さんだけでなく、妻の和歌子さんや典己さんにも機能面での説明を丁寧に行うなど好感を持ったとのことだった。
今後の展望を聞いた。まず畑作4品の栽培技術のレベルアップが大前提とした上で、「十勝の気候が変化していて、穫れていたものが穫れなくなったり、本州のものが温暖化で獲れるようになったりしているが、個人的には本州の作物を十勝でやる必要はないのではないかと思っている。野菜にも色々手を出してきたが、人を使って、自分のスケジュールを切り詰めて働くよりも、ある程度自分の時間を持ちながら、確実に成果をあげられる技術を持った上で、バランス感覚を備えた農業経営者になりたい。温暖化で降雪の時期が後ろ倒しになり、これまで11月頭までだったビートの収穫も長く行えるようになってきている。温暖化で生まれた時間を有効に使い、1年をもっと長く考えていきたい。もちろん、そのためにはメーカーさんの技術や協力も不可欠」と述べた。
インタビュー中の勝俊さんは、時に高らかに笑い、時に真剣な目で将来を見据えた。就農のきっかけこそ恥ずかしそうに語ったが、今や芽室町の農業を背負って立つ存在であることは間違いない。15年間の経験の中で就農当時のことを笑って話せるだけの強さと余裕を身につけたということだろう。









