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令和6年11月11日発行 第3528号 掲載

ロシアの農業政策/農林水産政策研究所・令和5年度カントリーレポート

 農林水産政策研究所はこのほど、「令和5年度カントリーレポート:EU、フランス、ロシア」(2024年5月)を取りまとめて公表した。この中から、第4章「ロシア―西側諸国との間に深まる溝とその影響」の概要をみる。
 ◆農業生産動向
 ロシアの2023年の穀物と豆類を合わせた生産量は1億4265万トン。過去最大を記録した2022年には及ばないものの、それに次ぐ記録的な収穫量となった。
 ロシア穀物取引市場では、2023年7月からカーギルやバイテラ、ルイ・ドレフュスといった西側のメジャーが相次いで撤退するという波乱が起きたものの、市場を揺るがすような大きな影響はみられなかった。むしろ、23~24年度の前半を終えた段階で、ロシアからの穀物輸出は記録的な3670万トンとなることが見込まれている(表)。
 ◆種子自給率
 ロシア政府は、国内で作付けされる農作物の種子を、高い比率で欧米の種苗会社に依存している現状を憂慮して、種子の自給率を高めていく方針を取っている。これを実現するため法の整備が進められ、2023年9月1日に新しい育種法が施行された。それによると、農作物として利用される全ての固定種と交配種は、分子遺伝学的検査を経て国家リストへの登録が義務付けられる。登録の際に発行される遺伝パスポートは、種子が一般に流通して利用されるために不可欠となり、これがないと輸入も許可されない。
 この新しい育種法では、農作物種子の生産から保存、輸送、換金、サービスの提供を含む利用まで、農業省が運営する連邦国家情報システムを通して、一元的に管理される。
 ◆黒海穀物イニシアチブ
 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、ウクライナからの穀物供給を停滞させることによって、世界的な食料危機の可能性を引き起こした。この危機的状況を回避するために、同年7月22日、対立するロシアとウクライナおよび調停役のトルコと国連の間で、「黒海穀物イニシアチブ」が結ばれた。締結国と国連は、黒海に面するウクライナの3つの港(オデーサ、チョルノモルスク、ユージュヌイ)から輸送される食料と肥料の安全な輸送を保証することや、公平な取引を監視する目的で共同調整センターを設置することで合意した。120日ごとに条約内容を確認して、見直しが行われる。それと並行して、ロシアと国連の間では、経済制裁の解除を求めるロシア側の要求を盛り込んだ「ロシア・国連覚書(メモランダム)」が交わされた。有効期間は3年間で、ロシア側から主に次の5つの要求がなされている。
 ▽ロシアの銀行および財政機構のあらゆる障害を撤廃すること(特にロシア農業銀行のSWIFT〔国際銀行間通信協会〕への速やかな接続)▽農業機械、設備一式、また肥料製造分野における部品のロシアへの供給を再開すること▽ロシア船とその積荷に対する不利な航行料と保険料の設定を改善すること、またそうした物流の障害を取り除くこと▽ロシア産の肥料とその原料の自由な供給を可能にすること。特にトリヤッチ=オデーサ・アンモニアパイプラインを再開すること▽農業分野に関するロシア資産の凍結を解除すること。
 先述の「イニシアチブ」によって黒海に確保された「人道回廊」を通して、ウクライナの穀物は順調に輸送されたが、「メモランダム」の内容は何も実現されていないことを不服として、ロシアは2度目の「イニシアチブ」延長を決める2023年3月18日に、有効期間を60日に短縮することで継続に合意した。3度目の延長を決める5月18日には、ロシアにとっては友好国であり、「イニシアチブ」では仲介役を務めるトルコの大統領選挙直前だったことから、交渉の決裂は回避されたが、4度目の延長期限前日の7月17日に、ロシアは「イニシアチブ」からの離脱を表明した。「メモランダム」の示す条件を国連が満たしていないことが、その理由であるとしている。あくまでロシア側の立場としては、「イニシアチブ」は決して破棄されたわけではなく、国連側が「メモランダム」の条件を満たしさえすれば、いつでも交渉を再開する用意があるとしている。
 ◆アフリカへ食料供給
 黒海穀物イニシアチブをめぐる議論では、ウクライナから輸出される穀物の大半は、EU諸国や中国、トルコなど、経済的に豊かな国に輸出されており、実際に食料危機に瀕しているような貧しい国には届いていないということが、「人道的」な配慮を謳う「イニシアチブ」の欺瞞を追及するロシア側の論拠として、しばしば指摘されていた。そうした面と合わせて、ロシアではアフリカ諸国に穀物や肥料を供給することによって、ロシアこそが世界の食料安全保障に貢献していることを示す努力がなされている。
 2023年7月27~28日には、アフリカ諸国の首脳をサンクトペテルブルグに招いて、第2回ロシア・アフリカサミット会合が開催された。その席では、医療、教育、安全保障と並んで、農業におけるロシアとアフリカ諸国の協力が約束された。会議に出席したロシア肥料生産者協会の代表は、今後5年以内にアフリカ諸国への肥料供給を倍増させるとしている。
 また、このときプーチン大統領は、世界食料プログラムの一環として、アフリカ6カ国に無償の穀物援助を約束しており、同年11月にはソマリアとブルキナファソに各2万5000トンの小麦が船で搬送された。今後、マリ、ジンバブエ、中央アフリカ、エリトリアに向けて、合計20万トンの小麦が送られる予定になっている。
 ほかにも、同年3月には2万トンの肥料がマラウイに、5月には3万4000トンの肥料がケニアに、それぞれ無償で送られた。 

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