技術・方策の社会実装で議論/農業労災学会がシンポジウム

日本農業労災学会(田島淳会長)及び東京農業大学総研研究会3研究部会は10月25日、都内世田谷区の東京農業大学世田谷キャンパス横井講堂並びにオンラインにて、2024年度シンポジウムを開催した。今回は「農作業事故防止技術・方策の社会実装へのチャレンジ」をテーマに掲げて、農作業事故防止に係る現在の政策や、技術の開発と実装の状況、事故防止の取り組み事例などが共有された。その上で、事故ゼロを目指す活動のさらなる効果的な展開方向について意見交換を行った。
冒頭あいさつした田島会長は、農機は長期間使う農業者が多く、農作業事故防止においては、古い機械をベストの状態に保ちながらユーザーとの関係を維持していくことが求められるため、それを機械整備の質の向上などでいかに支えていくことが重要と指摘。また、農業労災学はいまだ学問として成り立っていないことから、これを成立させていくことが同学会の課題であり、11年目を迎えた今年は1つのフェーズ切り替えの年になるのではと展望した。
また、ビデオメッセージにて来賓あいさつした東京農業大学の江口文陽学長は、大型機械やスマート技術の導入など日本農業が進化している中で、いかに事故を防ぐかは喫緊の課題であり、ひとたび事故が起こると制限にもつながりかねず、規則を守りつつ安全に農業を進行させることが使命であると説明。同学会が声を大にして労災なき農業活動を発信していってほしいと期待を寄せた。
次いで、座長解題を経て講演に移り、基調講演として農林水産省農産局技術普及課生産資材対策室長・土佐竜一氏による「農作業全対策の推進について」、農研機構農業機械研究部門システム安全工学研究領域長・冨田宗樹氏による「農研機構における事故ゼロに向けた農作業安全システムの技術開発と社会実装の取組」の2講演、講演として一般社団法人日本農業機械化協会技術顧問・氣多正氏による「農作業事故と労働安全衛生対策―新しい動き―」、一般社団法人全国農業改良普及支援協会普及参事兼情報部長・齊藤総幸氏による「事故事例・事故防止 14のキーワード」など4講演が行われた。
冨田氏は農作業事故の現状について、就業10万人当たりの死亡事故者数が増加傾向にあり、そのうち6~7割が農業機械による事故であることから農作業安全と機械の安全性は切り離せないと説明。農作業事故は経営上の大きなリスクであるにも関わらず多くの農業者はその認識がないことから、農機研はこの事態を改善すべく、IT・スマート技術を安全にも活用する取り組みを推進。
成果の1つとして、調査した事故事例を分析し、データベース化して公開した(1)農作業事故の詳細調査・分析や、(2)VRを活用した体感型農作業安全啓発システムの開発、(3)シミュレーションを活用した農用トラクタの安全性評価を紹介した。(2)は簡易に現場で活用できる安全啓発資材として、VRゴーグルで農作業事故を体験できる動画システムをJA共済連と共同開発。主催者も受講者からも好評なことから、全国各地でVRを活用した新たな安全啓発が実現しているとした。また、スマート農機の安全について、機械が人に合わせて動作する協調安全に基づくリスクアセスメント手法及び安全システムや、装着型・小型農機の安全システムも開発を進めているなどと紹介した。









