乾田直播の取り組みと狙い・JA大潟村の小林組合長に聞く/秋田県農機ショー特集

東北土を考える会(清水一孝会長)は7月23、24の両日、秋田県大潟村で、夏季研修会となる「雪国直播サミットin秋田」を開催し、乾田直播に関する知識を深めた。開会の来賓あいさつでJA大潟村の小林肇組合長は、乾田直播は東北稲作地域の農業を変える1つの大きな技術と強調し、同サミットが農業経営のプラスになることを期待したいと話した。地元にとって乾田直播はどのようなメリットをもたらすのか―小林組合長にインタビューした。同氏は、乾田直播を稲作地域の課題に対応し、また環境の面でも素晴らしい技術と位置づけ、その拡大に意欲を示した。
――乾田直播の取り組みについて、経緯は。
小林 2年前に隣町の農協に乾田直播の機械があり、それをお借りしてやることになりました。1年目の実施農家は1人、2年目は4人、今年は9人に拡大しています。大潟村と直播の取り組みについては、開村当時、まだ田植機がない頃ですので、ヘリコプターで播種してというアメリカ型のような稲作も指向したのですが、圃場の均平がうまくいかなかったり鳥害があったりで、思うようにはいきませんでした。それですぐに周囲の農家に苗を作ってもらい、それを手植えしたという出来事もありました。その後、カルパーコーティング種子の直播など、研究段階では色々やってきましたが、本格的に取り組む農家はいませんでした。結局、苗を田植機で植えるというやり方以上のメリットは見出せなかったわけです。
大潟村の場合は、よそと違って農地の流動化が激しくないですし、急に面積が増えるという農家があまり多くなかった。その分、慣行の移植の方がリスクが少ないということもあります。しかし、今後はもっと労働力が少なくなっていくということと、コスト削減に結びつく方法を導入する必要がありますので、乾田直播に着目した次第です。
乾田直播のポイントは圃場の均平度を高めるところにあります。その点、導入に際しては、村内の半分以上の農家がレーザーレベラーを保有していて、均平については問題がない。また、春先にどれだけ畑状態に作れるかどうかですが、2年前からは春先の天候が良くて、スタートしてみた結果、収量的にもあまり移植と変わりませんでした。この2年間は、秋田県内でも不作の年でして、2年前は日照不足、昨年は酷暑、降雨不足が影響しました。そうした中でも収量は移植と遜色がなかった。今年はまだ集計の最中で、移植と比べると95%程度でやや少ない感触ではありますが、農家側では、それでよければぜひともやりたいという意向が強くなりました。今年からは村の助成を得て、農協で乾田直播の機械を導入し使っている状況です。
今年直播2年目を迎える水田7~8ヘクタール規模の農家の中には、田植機を手離し自分でクリーンシーダーを購入して全面直播に切り替えた方がいます。その方の場合はカボチャをやっていて、カボチャの定植と田の代かき作業が競合していたのですが、乾田直播の場合は4月の初めの播種で、その後の除草剤散布と少しは重なるかもしれませんが、直播であればカボチャの作業に専念できることから、積極的に直播に取り組まれています。
――今年7月には東北土を考える会がこちらで「雪国直播サミットin秋田」を開催しました。 小林 地元の方たちも注目度が高くて、いい機会を得たと思います。大潟村でも先駆者といわれる方がいまして、やはりレベラー、プラウを活用し乾田直播をやっていたんですが、今の技術と違うのは、播種した後にローラーで踏みつける、鎮圧することによって画期的に発芽率が上昇し、これである程度技術的には確立したということができると思います。また、除草の面では、ラウンドアップを発芽の直前に撒くことで、ある程度除草ができ、稲の葉が三葉すぎたら水を入れて、そこから水田の管理というのが一番効率がいい。本当に春先に種まきがうまくできれば、この技術は素晴らしい。
米どころ秋田県は水田がかなりの面積あり、農地が担い手に集約してきていますが、担い手の方がそれを受けきれなくなっている実情もあって、こういった技術革新を取り入れることにより、面積の拡大でも余裕が出てくると思います。東北でいえば宮城県の古川地区、岩手県、そして北海道などが先行していますが、これから面積がさほど広がることはない、あるいは今の家族労働でこれからもいいというところであれば、今ある技術でいいと思いますが、これから面積が拡大する、高収益作物を手がけてもっと収入を上げたいといった人たちにとっては、乾田直播はとてもいい技術です。
それから大潟村の事情をいえば、八郎湖の水質汚染の問題があります。代かきを行った農地排水などで富栄養化になり、アオコ発生で水質汚濁が問題になっている中、大潟村は2001年に環境創造型農業の村という宣言を行い、環境負荷をできるだけ減らす農業を志向しています。そういう面でも乾田直播は環境に対する負荷を減らしていける技術になります。それから土地改良区にしても、一挙に水を使われるよりは徐々に使ってもらった方がいいわけで、これから乾田直播の面積が広がっていけば、そうした様々なところに寄与できる技術と期待しています。









