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令和6年10月28日発行 第3526号 掲載

新しい農に挑む・熊谷農進/秋田県農機ショー特集

 (株)ヰセキ東北秋田支社鹿角営業所(秋田県鹿角市花輪字諏訪野106)の紹介で取材に伺ったのは、秋田県鹿角郡小坂町にて水稲作を中心に営んでいる農事組合法人熊谷農進(熊谷聴代表理事・秋田県鹿角郡小坂町)。熊谷さんと奥さん、ご子息の勇人さん、勇人さんの奥さんののぞ美さんの家族4名の役員と、社員4名の計8名をメーンに、さらに農繁期に季節雇用のスタッフを雇って運営している。営農規模は米34ヘクタール(あきたこまち、ふくひびき)、ソバ16ヘクタール、牧草70ヘクタール。牛も10頭飼育しているほか、大量に発生するもみ殻を有効活用するため、もみ殻ボイラーを導入し、地域の農業法人や個人農業者と連携して、もみ殻ボイラーの発生熱をハウス加温に利用、啓翁桜の栽培を行っている。製造したくん炭は牧草地に散布して生育促進に活用しているという。稲刈り真っ最中の慌ただしい早朝、代表理事の熊谷さんにお話を伺った。
 同社は熊谷さんの父親が平成22年に設立した農事組合法人。熊谷家は代々の農家で、元々は地域の農家が寄り合う生産組合を運営していたものの、組合員数が著しく減って熊谷家のみになったことから、法人化に移行した。以降は地域農業の担い手として、規模拡大をしながら農地を引き受けている。
 同社が保有する農業機械は、トラクタ7台(100PS、80PS、55PS、33PSなど)、田植機2台(8条植え)、コンバイン1台(6条刈)をはじめ、直播播種機、ブームスプレーヤ、バックホウ、ドローン、各種作業機など幅広い。乾燥調製施設には乾燥機6台、色彩選別機1台なども備える。それぞれの機械はメーカーにこだわらず、国内外の農業機械を活用しているが、ヰセキについては「祖父の代から使い続けている」という。ヰセキについての評価を聞くと「担当者の対応がすごくいい」と笑った。同社を担当しているヰセキ東北秋田支社鹿角営業所・安保伸洋氏について、「いつも一生懸命で、非常によくやってくれる。やはり人と人とのお付き合いなので、機械よりも人にお金を出している感じだ」と笑顔で評価する。
 営農のこだわりを聞くと、(1)安心安全を消費者に届ける(2)地域密着型(3)国の政策と情勢をいかに先読みするか―をあげた。(1)は、安心安全を当たり前に整え、食べて安心安全なものを届けることをモットーに掲げており、その取り組みの一環としてJGAP認証を取得。のぞ美さんはJGAP指導員の資格も取得しており、基準に沿った営農を進めている。(2)については、やはり人と人のつながりがなければ農業ができないと述べ、地域農業者をはじめ、米を出荷している卸売会社、地域の福士施設、個人など様々な人の意見を聞いて対応することを心掛けていると説明。地域農業者と連携している、もみ殻ボイラーの熱を利用した啓翁桜のハウス栽培についても、今後さらに品目を拡大して冬期の営農に役立てたいとした。
 (3)は、農家はいち早く国による政策や情勢の先読みを行い、どれだけ乗れるかが重要と指摘。その1つが同社が注力している環境問題への対応にある。環境負荷を低減するべく、3年前から中干し延長によるJ―クレジットに取り組んでいる同社だが、バイオ炭の投入についても、申請を検討。また、将来は太陽光発電や風力発電などの設備を取り入れ、オフグリッド型農業にも取り組みたいと展望する。農業機械についても、「ハイブリッドの機械を作ってほしい。燃料・電気代が今後さらに上がる可能性もあるので、燃料コストが下がるように、灯油だけでなく、水素とかも視野に入れて、ハイブリッド式の自動操舵やコンバイン、乾燥機などがあれば」と要望を示した。
 今後については、いずれは子息の勇人さんが同社の後継者となるが、「会社や農地を守れとは言わず、のびのびとやってほしい」と温かい目を向ける。勇人さんは一度企業に勤めた後、脱サラして今年8月に就農したばかりだ。そんな勇人さんには守るプレッシャーを与えるよりも、自由に、柔軟に農業を考えてほしいという。「3~4代前は貧乏でまともに食べれなかった時代があった。その後、戦争も経てなんやかんやと頑張って今がある。なので全部なくなってもいい。人生は波があり、いつも上り調子ではないから、手放さないといけないときは何も考えずに手放していい。ダメになったら売ればいいし、また欲しかったら買えばいい。守りに入るよりも柔軟に考えていけと言っている」と語る。熊谷さん自身も20代で就農したものの、多くの失敗した経験が後々の知恵になったという。「農業はそうした引き出しの多さが大事。いかに労力を減らして効率と収量を上げるか。どうやって1+1=4にするのかというトンチが求められる」と営農の秘訣を語る。
 何より熊谷さん自身が守りに入らず、スタッフの提案を積極的に受け入れており、新しいことへの挑戦に貪欲だ。先に述べた環境配慮型農業の取り組みをはじめ、一昨年前からは営農支援システム「アグリノート」を取り入れた。水田の自動灌水システムも採用して、効率的な管理を進めている。情報収集も積極的に行い、年に1度は従業員を連れて研修旅行へ。昨年は(株)ミツハシの精米工場、今年は木更津で乾田直播・節水灌漑を行う「マイコス米」作りをしている農場へ視察に行き、熱心に話を聞いた。近隣にもマイコス米に取り組む農家がいると聞き、視察のうえ導入することを視野に入れている。さらに販売先開拓も積極的に行い、海外への輸出も検討している。
 「農業は工夫のし甲斐があって面白い」と語る熊谷さん。「地域で農家によるJ―クレジットの取り組みが進めば、小坂町は環境に優しい農業を推進する自治体としてアピールでき、農家は収入源にもなり、地域の経済が潤ってWin―Winになる。自治体とも連携して地域の取り組みを進めていきたい」と展望する。地域密着型農業を進める熊谷さんの取り組みに今後も期待がかかる。

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