新しい農に挑む・末広ファーム/秋田県農機ショー特集

ヤンマーアグリジャパン(株)東北支社鹿角支店(黒澤尚慎支店長・秋田県鹿角市十和田錦木字下野添37の1)の紹介で取材に伺ったのは、鹿角市十和田で米や野菜を生産している農事組合法人末広ファーム(秋田県鹿角市十和田末広)。末広地区の松山・土深井・大欠・石野の4集落で構成され、自然豊かな里山と田んぼを目指して、環境に優しい農業を実践している大規模法人である。営農面積は米80ヘクタール、ネギ14ヘクタール、キャベツ2ヘクタール、大豆20ヘクタール。ミニライスセンターや野菜の集出荷調製施設なども自社内に備え、社員7名及びパートスタッフ40名で生産から加工、出荷販売まで当たっている。取材に伺ったのは9月下旬の早朝であったが、ちょうど稲刈り及びネギの調製の真っ最中で、大勢のスタッフが忙しく作業を行っていた。
そんな繁忙期にも関わらず、快くインタビューに応じてくれたのは末広ファーム代表理事の柳沢義一さん(75歳)。代々の米農家の生まれで、自身で7代目に当たるという。長らく会社員との兼業農家を続けてきたが、地域で農家の高齢化に伴う離農が増えていたことから、末広地区の農業をどうにかしたいという思いにより、地域農業の維持発展を図るため、平成25年に柳沢さん含む3名の農家で同法人を設立した。それまではそれぞれの受託面積を営農していたが、平成27年度から実施された基盤整備により一本化を図るべく、その前に法人設立に踏み切った。
栽培している水稲は秋田生まれの「あきたこまち」。「メダカが泳ぎ、蛍の舞う田んぼ」を目指して、土も水も綺麗で安心・安全な田んぼを作るために、減化学農薬・減化学肥料栽培を実施。うち一部は無農薬栽培も行っている。こだわりを持って丁寧に育てているあきたこまちは「おいしい」と好評を博しており、出荷先の卸売会社の評価も高いという。鹿角市のふるさと納税返礼品にも採用されており、全国にファンが多い。また、飼料用米の多収品種「ふくひびき」も栽培している。
ネギについては、秋田県の「メガ団地等大規模園芸拠点育成事業」を活用。同事業は、秋田県が米依存の農業から複合型生産構造への転換を加速させるべく、大規模経営による園芸経営体の育成を目指して整備を支援するもので、園芸メガ団地は1団地当たり販売額1億円以上を目指す。末広ファームは令和元年度に同事業に着手し、それ以降大規模な園芸メガ団地に取り組んでいる。鹿角市で同事業を活用したのは末広ファームが初めてとなる。古くからネギ栽培が盛んな同地区のネギは太くて甘味が強く、地元の名物料理「きりたんぽ鍋」に欠かせない一品。作付け時期をずらして高価格出荷が期待できる夏どり作型にも取り組むほか、ハウスに貯蔵することでネギの年間出荷を目指している。
そして、末広ファームのそうした大規模生産を日々支えているのがヤンマーの農業機械である。同法人所有の主な農機はトラクタ5台(215PS、100PS、70PS、50PS)、田植機3台(うち密苗仕様2台)、コンバイン3台、その他管理機、土作り機械、ネギ収穫機、各種作業機など。「ほとんどをヤンマーから導入した」と語る。215PSのトラクタはジョンディア製で、ストーンクラッシャー用に活用している。柳沢氏はヤンマーの農機と取引について、「29歳の時からずっとヤンマーを使い続けている。ヤンマーとは数十年の付き合いだが、エンジンが粘り強く使い心地がいい」と笑う。同法人を担当するヤンマーアグリジャパン東北支社鹿角支店主任・清野剛氏については「何かあったらすぐに来て整備してくれる。細かいことまで気を配ってくれて、よくやってくれている」と高く評価している。
機械のこだわりについては「スマート農機に期待をかけている」と語る。トラクタの自動操舵を3~4年前から地域に先駆けて取り入れ、ネギなどの畝立てをスピーディーかつ正確に行っているほか、今年からは営農支援サービス「アグリノート」も導入。アグリノートをスマート農機と連携させて、日々の農作業やスタッフの勤務など効率的な管理を進めている。「機械の更新がそろそろだが、資機材とも価格が高くなっているため、簡単には機械の更新に踏み切れない状況」と語るが、「スマート農機をもっと取り入れてさらに効率化を図りたい。今は人手を集めるのも大変なので、いずれは無人トラクタ・有人トラクタの協調作業なども取り入れたい」と期待をかける。
営農の課題と展望を聞くと、ファーム全体の労務管理や社内育成、ネギ生産におけるメガ団地の目標1億円達成を目指すこととした。
地域雇用と社員教育に力を入れる同法人には、地元出身の若いスタッフが多い。20~30代のスタッフに作業のリーダーを一任したり、パソコン作業を任せるなど、「若手の邪魔をせず、若手がやりやすいよう、自分の考えを活かして仕事ができるように環境を整えることを大事にしている」と語る。そうした工夫や姿勢が伝わり、若手スタッフは皆よく勉強しているという。そして、今年も地元かつ非農家出身の若いスタッフが自ら志望して、入社したそうだ。
ネギ生産のメガ団地事業については、来年度で5年目にあたる。ネギ生産は手間暇がかかり、米やキャベツなどの作業と重なる時期は人手がまわらず、「特に雑草対策が大変」と課題を述べる。しかし、そうした労苦も背景にあるせいか、地域でネギ生産農家が少なくなっている現状をみて、「ネギのメガ団地の成功が地域活性化につながる」と意気込む。1億円達成に向けて、もっと地域雇用を促進し、人員も機械も増強したいと語る。
「地域のためにと、毎年良しと思って取り組んでいるのがやりがい。これからも、地域の人たちと一緒に歩み続けていきたい」と語る柳沢さん。今年の新米もたわわに実り、県内はもちろん、全国のあきたこまちファンをうならせることになりそうだ。









