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令和6年10月28日発行 第3526号 掲載

新しい農に挑む・八幡平地域経営公社/秋田県農機ショー特集

 猛暑と豪雨による不作・品質低下に見舞われた昨年を乗り越え、今年の秋田の新米は作況指数102の「やや良」となった(9月25日現在、農林水産省発表)。本特集号を作成するべく県内の取材に回った9月下旬は、例年よりやや早めの稲刈りシーズン真っ最中。水田にはたわわに実る金色の稲穂が一面に広がり、今年も美味しい「あきたこまち」新米が全国に出荷されることを確信し、改めて農家の方々に謝意を抱いた。今回はそうした秋田の農業現場を回り、全国に美味しい米を届けている農業者に営農の工夫やこだわり、留意している事柄、農機の活用などについて話を伺った。取材を通して、地域農業を守るべく規模拡大を進め、新しい技術や取り組みの採用に意欲的な農業者の姿が印象に残った。「新しい農に挑む」生産者の話を参考にしてほしい。
 稲刈り真っ最中の9月下旬、(株)秋田クボタ鹿角営業所(成田和也所長・秋田県鹿角市十和田錦木字冠田37の1)の紹介で取材に伺ったのは、秋田県鹿角市八幡平で米・ソバ・啓翁桜(切り花用の桜)を生産する農業法人(有)八幡平地域経営公社(秋田県鹿角市八幡平)。同社代表取締役の阿部聖さん(59歳)にお話を伺った。
 同社は鹿角市の農業構造改革計画の一環で、農作業受託組織として設立された地域経営公社。担い手不足と農業者の高齢化・リタイアが進む地域の農地を保全・活用する持続性を持った組織として設立されたという。地域農家の同意を集めたうえで、市が出資を行い、平成8年に設立された同社は、当初は常勤役員4名でのスタートだった。その後の法改正により生産組織として農地が借りられるようになり、農地集積が進み、28期目を迎えた令和6年現在は役員含めた社員が11名、季節雇用パート7名を加えた18名体制で、栽培面積は米65ヘクタール、ソバ65ヘクタール、桜2・5ヘクタールまで拡大した。米は秋田県産の「あきたこまち」「めんこいな」を生産している。「農地を借りられる生産組織になって以降は、『まるごと管理してほしい』という地域農家のニーズが集まり、引き受けている農家戸数は170軒以上」という。さらに近年は、近隣の農事組合法人ななかまどファームの営農面積30ヘクタールについても、作業受託し、管理などをともに行い、地域農業を担っている。
 同社の特徴の1つは、そうした大規模な農業を効率的に進めるに当たり、先進的な農業技術を積極的に取り入れ、作業をよりやりやすく、日々進化させていることにあるだろう。導入している農機は「ずっとクボタ」だと、クボタ一筋を語る阿部さん。所有している農機はトラクタ6台(50PSクラス複数台)、田植機3台(8条植え)、コンバイン2台(6条刈)、ドローンなどとなっており、これにななかまどファーム所有の農機も加わり、大所帯である。担当の成田所長については「とてもお世話になっている。違和感があるとすぐ来てくれて、こまめなアフターフォローをしてくれる」と厚い信頼を寄せている。
 クボタのスマート農業技術を意欲的に取り入れている同社。KSASはサービス開始の10年前から入会し、農機についても直進キープ機能付き田植機や収量コンバイン、アグリロボコンバインを活用している。「スマート農業にこだわるというよりも、うちの組織の取り組み方にマッチするかどうか、使ってメリットが出せるかどうかで導入している」というが、KSASとスマート農機については「作業記録をつけるのが楽になったし、オペレータの負担も減った。特に繁忙期は本当に助かっている」と高く評価。スマート田植機は今GPSのものを活用しているものの、より高精度なRTKによる直進アシストの実演をみて、「確かに楽だし、経験が浅い人でもそれなりに植えられる」ことを実感し、次の更新時の導入を検討している。
 また、KSASによる圃場管理やマップ表示も非常に効率的でわかりやすいと評した。「圃場の枚数がアナログでは追い付かないほど増えたので、KSASを導入して効率が各段に向上した。作付け計画もマップから圃場を選んで入力するだけでよく、圃場マップに色を載せたり、情報を入れ込むことができるのはKSASならでは。使い勝手がいい」と語る。同社では活用場面によって、マップをスマホで確認したり、プリントした紙を広げて皆で話し合ったりと使い分けているそうだ。
 さらに今年に入り、乾燥調製施設を一新し、KSASと連携した乾燥調製システムを導入した。今秋が初めての活用になるが「今まで勘と経験でやっていた乾燥・調製作業をデータをもとに正確にできる。施設内からKSASを通してコンバインの刈取り状況がわかるので、作業予測が立てられる。後からデータを見返せるのも便利」と利便性を実感している。「ライスセンターはぎりぎりの人数で回している」ため、常に進捗をみつつ、見通しを立てながら作業を進められることが大きなメリットだと語る。
 そのうえで、今後については収量コンバインや乾燥調製施設で集めたデータを元に、翌年の施肥計画改善や可変施肥につなげていくことを目指しているとした。「可変施肥については、ザルビオなど様々な製品やサービスが出ているので模索している」という。
 そして、もう1つの同社の大きな特徴は、自由闊達な社内の環境と、若手の活躍を促す教育にある。同社の平均年齢は40歳ほど、社員の主力は30代という若手中心の組織である。秋田県が実施している「次世代農業経営者ビジネス塾」などに参加させて、社員の研修・勉強を後押ししているほか、先に述べた新しい技術や取り組みを積極的に取り入れていく同社の姿勢は、社員からの意欲や発案が活発なことが大きい。「半年に一度行う社員面談で様々な提案が出てくることも多い」のに加え、提案書を出すごとに褒賞としてクオカードを支給する制度もあり、「新しいことをやってみたいという意見を取り入れていくよう、社内全体で大事にしている」と語る。そのようにして、ドローンによる防除や、農業機械整備などを社内で回す体制を徐々に整えてきた。社員が命じられて動くのではなく、自ら考え、それぞれやりたいこと、得意なことを活かして自発的に楽しく働ける体制を大切にしており、コミュニケーションを欠かさないという。
 今後の展望については、環境配慮型農業の取り組みに力を入れていくことをあげた。「そもそも安心安全な農作物を生産・供給することが当たり前であり、その当たり前を外さないように」しており、その1つが全圃場の基肥における堆肥活用であり、また、グローバルGAP認証を2年ほど取得していた経験から、その基準に従った管理を行っている。今後はさらに環境問題への取り組みが価値を生むのではないかとみて、社内に籾殻くん炭プラントもあることからJ―クレジットの取り組みなどを拡大していくつもりだと語る。一方で、地域で離農が増えているため「今後さらに規模を拡大せざるを得ない」ことを踏まえ、いずれは基盤整備も視野に入れつつ、更なる効率化を図りたいと述べる。
 地域農業を一手に担い、さらに規模を拡大し、環境に優しい営農に取り組んでいく八幡平地域経営公社。同社の課題解決とやりたい農業の実現に向け、今後もクボタの農機と秋田クボタ・成田所長が伴走していく。

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