静岡・天竜署が架線集材システム現地見学会/林業・環境機械展示会特集

急峻な地形が多い我が国の林業地では、いまだ立木伐倒のかなりの部分をチェンソー作業に負っている。また、伐倒木の搬出についても車両系では十分対応できないところがあり、そこに架線系機械の出番がある。9月25~27の3日間、天竜森林管理署と静岡県西部農林事務所天竜農林局は、「令和6年度新しい架線集材システム現地見学会」を開催し、急斜地での集材作業に1つの道を提案した。ここでは、その内容をみる(9月30日号一部既報)。
見学会には、行政関係者、森林組合関係者、林業事業体など、各日ごとに70人前後の参加者があり、関心の高さを表した。技術披露したのは、イワフジ工業(株)(有吉実社長・岩手県奥州市水沢字桜屋敷西5の1)が供給している「架線集材システム」(グラップルBLG―16+油圧集材機YR―302E)およびプロセッサGP―35V。また、プロセッサのベースマシンは日立建機のZAXIS35USになる。
架線集材システムの大きな特徴は、1台のシステムラジコンで同グラップルと油圧集材機の全操作を行うことで、従来、先山の荷掛け手、集材機操作員、造材オペレータの3人体制で行っていた作業を2人体制でこなし(造材オペレータが集材機もコントロール)、かつ軽労化とともに、人が材に近づくことで起こりやすくなる事故の機会を減らし、安全性の面でも格段に向上するなどのメリットをもたらす。また、同ラジコンを1台追加し荷掛け手が持てば、元柱側との通信の受け渡しにより、材の状況に応じてさらに作業はスムーズに進められる。
会の冒頭にあいさつした天竜森林管理署の岩田清人署長は、「急峻な地形でも効率的で安全に作業が進められる機械が求められている。今回見学するシステムは、1つのリモコンで集材作業をより安全に効率化できるものであり、新しい林業の実現に向けて見学会が有意義なものになるように」と期待を寄せ、同署の太田誠森林技術指導官の司会進行で機種説明・実演に移った。
実演は、平均傾斜35度の対面傾斜地から水平距離約500メートルの間を架線集材し、プロセッサ側に引き寄せた材はすぐにプロセッサで造材作業にかかる。対象木は伐期を迎えた72年生のスギ。県内で12月からバイオマス発電所の運転開始を予定しているフォレストエナジー(株)が立木公売の買受者になり、燃料となる材をいかに低コストで調達するか、現場はそのテストケースにもなっている。
対面する傾斜地で伐倒木を見ている先柱側の作業員は、プロセッサ側から迂回しながらおよそ1時間をかけて現場に歩きつくとのこと。作業の大変さはもちろん、その省力化・効率化ニーズがいかに強いものかが理解できる。
7月末から元柱側で機械操作に当たってきたクラッチウッドマテリアルズの宮本哲司代表は、ラジコン操作については2、3日で理解でき、微調整その他の技術を覚えながら、いまは40本/日程度の搬出量になっていると話し、さらに習熟すれば、1度に複数の木を運ぶなどして、同60本の水準にはいけるだろうと展望した。
システム説明にはイワフジ工業販売促進課の坂野勝係長が当たり、油圧集材機は3ドラム独立HSTシステム採用、3架線インターロック同調と独立同時制御で、エンドレス索の速度は毎分417メートル、リフチング巻き込み能力は約28kN、架線式グラップルは索道により回生充電していること、自然環境に配慮し生分解性作動油を使っていることなどを紹介した。
さらに同システムは、1.AI画像による木材検知で自動引き込みし、AIが集材機のドラム回転の指示を行う、2.架線式グラップルに付いているカメラで撮影したものをデジタルツイン映像としてオペレータのARグラスに表示し、プロセッサのキャビン内から遠隔操作する、3.小型のサブラジコンで油圧集材機の操作を可能にする―それぞれのグレードアップの研究開発が進められていると説明した。
実演後は、フォレストエナジー(株)の関係者がバイオマス発電に係る取り組みを説明。林地残材の活用を促進することで、木質バイオマスエネルギー源の安定調達と皆伐再造林の推進に寄与したいとし、また、天竜営林署の太田氏は、同署で進めている林業現場での労働災害防止活動および天然更新を促すための早生樹育成に関する取り組みをアピールした。
労働災害防止については、リスクアセスメント講習会を実施し、従事者の意識啓発、リスクアセスメントの実習を通じた作業条件の改善などに結びつけ、同署も積極的に対応していることを強調。早生樹に関しては、標準伐期齢が30年のテーダマツ林を活かし、森林・林業研究センターの協力を得て試験地を設定、天然更新技術(種子の飛散、獣害状況など)の確立を目指し研究を推進。成果が得られれば、地拵え・植付経費の削減、下刈り回数の減少、シカ害被害が受けにくい=獣害対策費用の軽減、収穫期間の短縮などさまざまのメリットが見出せると指摘。
合板用材として使え、これまで展開してきたスギ・ヒノキの循環型モデルに加えて、二酸化炭素吸収対策としても、早生樹を活用した取り組みを広く民有林に紹介したいと話し、11月には現地検討会も開催を予定している。同署管内には、テーダマツ林分が約70ヘクタール、スラッシュマツ林分が約1ヘクタールある。
このほか、スギの特定苗木の全量植栽(下刈りの省力化など)、スギの育種集団林造成と優良系統の選抜(優れた初期成長で下刈り回数の低減、材積増加で二酸化炭素の吸収の増大を期待)を進め浜松市の国有林などに育種集団林を造成してきたことを報告した。









