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令和6年10月14日発行 第3524号 掲載

林野庁技術開発推進室・塚田直子室長インタビュー/林業・環境機械展示会特集

 6月19日から22日までドイツ・ケッセン州シュバルセンボルン市で開催されたKWF。世界最大規模の林業機械関連の展示会として知られており、主催者発表でおよそ5万人を超える来場者で賑わいを見せた。30カ国から521社を超える出展者の一つとして日本政府も初めて小間を設けて、日本の森林・林業事情のパネル展示に加えて自動走行林業機械の動画や(株)諸岡のクローラ式ダンプなどを展示し、我が国の林業機械事情をPRした。そこで今回、林野庁から参加した技術開発推進室の塚田直子室長に登場願い、初出展したKWFを観ての印象、感想、手応えなどをうかがった。塚田室長は、ドイツと我が国との機械事情の違いなどを実感しつつも、機械化対応のあり方などを吸収し、これからの事業に活かしていきたいと意欲を示している。
 ――今年の6月にドイツで開催されましたKWFに参加・出展した経緯から。
 塚田 KWF大会は1964年から定期的に開催されていますので、もしかしたら過去にもあったかもしれませんが、日本政府としてはおそらく初めての出展と考えてよいと思います。
 その経緯としましては、2016年に開かれた前々回の大会の時に林野庁から森林整備部長以下5名が出張したんですが、2020年大会はコロナウイルス感染拡大のため中止となってしまいました。その後、2022年にミュンヘンで開催されたインターフォルストに林野庁から出張者が行った際、KWFから2024年大会に向けてパートナーシップを組めないかという打診を受け、それを持ち帰って検討しまして、2023年3月に当時の木下研究指導課長とKWFの議長との間で意向表明書を交換。KWF自体は今回8年ぶりの開催となりましたが、林野庁として初めての出展を伴う参加となりました。
 林野庁からは私を含めて3名、共同出展者として森林総合研究所から林業工学領域の中澤室長、大塚研究員そして共同研究先の(株)諸岡さん、(株)アドイン研究所さんにもご参加をいただきました。
 ――出展の目的は。
 塚田 海外の林業機械の最新動向に関する情報収集のほか、日本の森林・林業の現状や林業機械の開発動向についての情報発信、特に自動走行やレーザー計測といった、日本で開発中の先端技術の紹介、それに対する海外市場の反応を見てみたいということで出展しました。
 私自身はKWFは初参加でしたので事前にあまりイメージできていなかったのですが、屋外の相当大きな面積を使って、森林と草地が織りなす大きな風景の中で開催されていることにまず圧倒されました。私たち林野庁の展示ブースは、KWFの展示スペースに近い林道端にスペースを割り振られまして、そこにテントを立てて、隣に諸岡さんが開発しているクローラダンプを展示しました。テントの中では、自動走行林業機械類や地上LiDAR計測器の動画、日本の森林・林業に関するパネルを展示しました。
 ――展示の反響、手応えはいかがでしたか。
 塚田 連日多くの方々に訪れていただきましたが、特に自動走行フォワーダや遠隔操作伐倒機械といった現在開発中の機械の動画に関心を強く示す来場者が多かったです。
 日本の森林・林業政策については、大学院の学生さんなどから、色々と質問を受けました。ちょっと面白かったのが、林野庁職員の平田さんが描いている、女性が主人公の高性能林業機械の漫画をパネル展示しましたところ、ドイツの女性グループから、これは素晴らしいと絶賛されるといった場面もありました。
 会場内はかなりの広さですので全て見て回ろうとすると、6キロぐらい歩くことになるのですが、出張者は交代で他の展示を回っていました。展示だけではなく、様々なテーマ別のシンポジウム、セミナーなども行われていますので、そうしたところものぞいたりしました。
 さらにエクスカーションということで、会場とはまた別のバスで行かなければならない場所に実演会場が設置されておりまして、実際に木を切り倒したり、あるいは植え付けたりといった作業の実演を見学することができました。最新鋭の機械から馬搬集材まで、幅広い技術が展示されているのも興味深かったですね。
 また、日本の林業事業体や大学、林業大学校から視察に訪れている方々も多く、思った以上に欧州との民間ベースでの技術交流が盛んに行われていることを実感しました。
 ――そうしてKWFをご覧になって印象に残った点については。
 塚田 一つは環境対応に関する意識の高さを強く感じました。基本的にドイツは地形が平坦ですし、路網が非常に整備されておりますので、大型の車両系の機械での林業が中心で、展示されている機械も日本ではなかなか見ないような大型機械が中心なのですが、近年、大型機械を使用することによる自然生態系へのインパクトへの懸念も高まっているということで、それを低減していくことを打ち出した小型軽量の伐倒機械や造林機械も出展されているのが目に付きました。
 ――といいますのは。
 塚田 気候変動による森林への影響が日本と比べると顕著になってきているようで、針葉樹としては主力であるドイツトウヒの集団枯死が発生し、これが大きな問題になっています。枯れた後にまたスポット的に造林をしていかなければいけない状況で、その際にドイツトウヒがこれからの気候変動に適応していくかも分からないので、広葉樹に樹種転換していくことを含めて、将来の気候変動への適応を意識して造林が行われているとのことでした。そうしたこともあってか、各社から小型の造林機械も数多く展示されていました。
 ラジコンの下刈機のようなものですとか、小型の地拵機、それから地拵えと苗木の植付けを一連で行うことのできる植付機、溝を掘って種を撒く機械といった、アタッチメントの付け替えで多様な作業のできる機械が出展されていました。小型の下刈機については日本でも乗用型、遠隔操作型の実用化が進みつつあり、現在、あらかじめ設定したルートに沿って自動走行する下刈機の技術開発を支援しているところですが、傾斜地など条件の厳しい現場でも使えるような機械の開発と同時に、機械化を前提とした造林地の設計も検討すべき課題です。
 また、ドイツは日本に比べて路網がよく整備されていますが、気候変動との関連で、路網を入れすぎることによって林地の乾燥が加速したり、根系のネットワークを遮断して気候変動への適応力が低下したりしているのではないかということも言われており、路網間隔をこれまでよりも広くすることを念頭に置いた施業システムも目指しているように見受けられました。
 ――その他には。
 塚田 路網のメンテナンスに対するコストや熟練技術者の不足が課題として意識されているようで、そのために3DLiDARやAIを使ってメンテナンスが必要な箇所を機械的に特定し、予防的に整備を行うことによってメンテナンスコストを下げていく考え方を検討していることなどが分かったのは、非常に興味深かったですね。
 あともう一つ、日本でも廃プラスチックが話題になってきていますけれど、すでにドイツでは廃プラスチックの環境放出に関する規制が施行されているということで、生分解性のツリーシェルターの需要が非常に高まっているということでした。ドイツでは狩猟が盛んだそうですが、シカによる苗木の食害はやはりあるそうで、ドイツトウヒの集団枯死に伴って造林面積が増える傾向にあることもあって、バイオマスプラスチックや木材、木綿、セルロースなど様々な生分解性素材で作られた製品が出展されていたのには驚きました。
 安全性や生産性の向上など林業の持続性の確保をしていくこともさることながら、林業が生態系に及ぼす影響に対する配慮ですとか、逆に自然生態系への変化にどのように適応していくかという観点も、やはり自然と密接に関わる林業の将来を考えていく上で、改めて重要なことだと感じた次第です。
 ――得るものは多かったですね。
 塚田 ヨーロッパに向けた情報発信はこれからも続けていくことができたらいいなと思っています。また、KWFに限らず、こういった大規模な林業展というのはエルミナウッドですとか、先に申したインターフォルストなどが行われていますので、そうしたところにより積極的に日本からも出ていって、情報収集や情報発信、意見交換を行っていくことが必要だと感じました。
 ――その他、技術的なことで何か感じたことはありますか。
 塚田 環境対応などに関してはヨーロッパが先を行っている感じがしましたが、日本が先をいっているんじゃないかと感じたのは自動化・遠隔操作化技術の部分ですね。今、遠隔操作化に関しては、伐倒や下刈りは社会実装の段階に入っていますし、自動化についてもだいぶ社会実装が視野に入ってきた状況にあるんですけれども、自動化に関してはヨーロッパではあまり取り組まれていないのか、出展は見受けられませんでした。
 社会的な背景の違いもあるのではないかと思いますが、日本では、担い手不足の解決策の一つとして自動化・遠隔操作化に重点的に取り組んでおり、近年急速に実用化に近づいています。まずは国内で普及していくことが重要ですが、将来的に輸出も視野に入れていくことも夢ではないんじゃないかという印象を受けました。輸出を実現していくためには、輸出先の規格との整合性ですとか、安全装備を備えていくことも考えていかなければと感じました。
 ――貴重なお話、ありがとうございました。

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