食と農の未来考える/生研支援センターがムーンショット目標5で対話イベント

生研支援センターは8月20日、都内江東区の日本科学未来館7F未来館ホール及びWebにて、対話イベント”2050年を創るムーンショット双方向対話 エピソード1「あなたが決める未来の食と農」”を開催した。
これは、国の大型研究プログラムのムーンショット目標5「2050年の農と食」において、各研究者が挑戦している8つのプロジェクトを発表し、参加者と意見交換を行いつつ、参加者が魅力を感じたプロジェクトに投資をする仮想の投資ゲームを実施したもの。同イベントには、高校生・大学生約50名を含む約200名が参加し、研究者らと活発な対話を行い、仮想の投資ゲームを通してプロジェクトへの意見やアイデアを発信した。
開会に当たり、目標5PD(プログラムディレクター)の千葉一裕氏(東京農工大学学長)が「2050年までに、未利用の生物機能のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」と題して講話。千葉氏は食料問題の現状について、「2050年まで食料供給が持続できるのかという深刻な状況」と指摘。食料供給産業は温室効果ガス排出及び土壌劣化要因の1つであり、グローバルなフードシステムにおいては、人間が食料を食べるだけで地球にある温室効果ガスの4分の1を大きく超える量が排出されると述べ、こうした問題意識を皆が持たなければならないと説明。
人類は空気中の窒素と化石燃料(水素)を用いて肥料を作るハーバー・ボッシュ法の開発により、緑の革命と呼ばれる食料の大量生産に成功し、人口爆発が起きたものの、それとともに環境破壊が進み、地球は既に限界を超えてしまっている。2050年の食料需要は2010年の1・7倍、2030年の飲食料市場規模は2015年の1・5倍になると見込まれ、更なる増産が必要であるが、世界の飲食料市場における健康コスト・環境コスト・経済コストを合計すると、市場全体の価値より大きくなってしまい、実質マイナスになっているとした。
その要因の1つに食料ロス・食料廃棄及び農地での廃棄の問題等があると述べ、こうした農・食を巡る諸問題を乗り越えるために様々な観点で研究開発を進めており、本日は8つのテーマで研究者が発表するので、率直な意見をぶつけてほしいなどと語った。
続いて平瀬錬司氏(サステナブル・ラボ代表取締役CEO)が「インパクト投資~未来を良くするための『ロマンとお金』」の講話を行い、儲かりそう(お金)かつ未来を良くしそう(ロマン)な企業・事業に投資するインパクト投資の概要と心得を説明。投資対象に何を選ぶかで未来は変えられると述べ、良いインパクト投資先はロマンとお金が高度に両立していることなどを示した。
その後、8件の研究者プレゼンが行われた。そのうち一部をみると、内藤健氏(農研機構)による「サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現」では、温暖化や干ばつの増加により水が足りない未来を見据え、主要穀物である稲・麦・大豆を中心に、野生植物が独自に持つ環境適応遺伝子を全て導入した気候変動適応型作物を開発して、安定した食料供給を目指すと説明。将来的には野生植物の耐塩性機構を集積した海水で栽培できる作物を作り、海上フロートにて栽培を行うことで水・農地不足の問題を解決できるのではなどと語った。
一方、日本典秀氏(京都大学)は「先駆的な物理手法と未利用の生物機能を駆使した害虫被害ゼロ農業の実現」をプレゼン。病害虫雑草による作物減収は4割を超え、この被害をなくせば収穫は1・7倍になるとされ、同研究では(1)共生微生物による広域での害虫密度低下・無毒化(2)青色レーザーによる迎撃及び微小害虫の殺虫(3)オールマイティ天敵による撃ちもらした害虫の捕食―の3ステップで農薬に依存せずに害虫防除を図る方法を開発しているなどと語った。
研究者プレゼンの後、研究者と参加者による双方向対話及びポスターセッションが行われ、参加者はそれらをじっくり吟味したうえで投資先を決めて投票。投票結果をみると8つのテーマ全てにほぼ均等に投資が配分された結果となり、全ての研究の魅力が高校生・大学生含む参加者に十分に伝わったようだった。









